例えば、日本文化の中心が京都から東京に移ったのはわずか200年前のことですが、虎ノ門は、皇居エリアの西側にあたり、東海道につながる方角にあったことから地理的な結節点であり、実際に堀で隔たれるなか、町人文化を中心とする江戸の重要な場所として栄えてきました。今後は、デジタル化やオンライン化が進みフラットになっていくなかで、他のエリアといかに差別化していくかが重要になります。
2つ目は「質」を高めることです。虎ノ門ヒルズ、あるいはTOKYO NODEに、どんなイベントがあり、どんな人が集まるかを明確に定義することで、そこにターゲットを集中させることができ、新たなイノベーションが生まれやすくなるのではないかと考えます。
谷本:では、虎ノ門から生まれるイノベーションとはどのようなもので、それを生み出すにはどんな交わりがあると良いと思いますか?
江﨑:僕の業界でイノベーションという言葉はあまり使わないのですが、個人的には、両極端にあるものが交わる環境を作ってほしい、そんなコーディネートをして欲しいなと思います。
新しい曲のアイデアが生まれてくる瞬間はどんな時かと考えると、自分の持っているものとは全く異なるような、例えばヒップホップとクラシックが交わるような瞬間なんですよね。その意味では、「場所自体に色がつきすぎてない」というのが必要な要素で、特定のカルチャーに染まっていない虎ノ門のイメージは逆に強みではないかと感じています。
本多:私も最初から方向性を明確にするのではなく、無作為で無計画であることが大事ではないかと。まだ無名な人たちが無意識に訪れるようなスペースを用意することが重要だと考えます。
虎ノ門のある港区は、外国人比率が高く、ハイソサエティなイメージもありながら、実は単身世帯が多いエリアでもあります。夜間人口と昼間人口の差が激しいことから、夜間や休日に活用できる余地はまだまだ多くあります。また近くに官公庁が多いことから、いわゆる“お堅い”方々が息抜きに訪れるようにもなれば、ますますイノベーションが生まれやすいのではないか思います。
谷本:TOKYO NODEは世界に向けた情報発信拠点を、またTOKYO NODEを擁する虎ノ門ヒルズは、国際新都心を目指しています。そうしたグローバルな展開において、どんな要素が必要になるでしょうか?
本多:虎ノ門という地名を聞いたこともない人たちに対して、街のイメージを印象付けるのは難しいものの、面白いテーマだと思います。ニューヨークやロンドンでも体験できることばかりでは、人々はわざわざその街を訪れません。そのため、虎ノ門ならではのオリジナリティやカルチャーを生み出していく必要はありそうです。
ただ、すべてが虎ノ門から生み出さなければいけないわけでもありません。例えば京都も、京都発祥の文化はそこまで多くなく、日本全国の文化を持ち寄った結果、現在の京都に至っています。虎ノ門も同じように様々なものが持ち寄られることで、遠くの人からも認知されるのかなと思います。