再生可能エネルギー研究の専門家が2020年に立ち上げたグリーンテック開発スタートアップPXPは、吸収する太陽光の波長帯域が異なるペロブスカイト太陽電池とカルコパイライト太陽電池をタンデム構造にした、軽量で柔軟に曲がる極薄の太陽電池の製造方法を世界で初めて開発しだが、その太陽電池の裏面に全固体電池を貼り合わせるという新しいセル構造を提唱した。
太陽電池と蓄電池が一体化すると、単に蓄電能力が備わるだけでなく、太陽光発電に必要なさまざまな電気的制御をパネル自体が自律的に行えるようになる。通常は、光の強弱に対応して電力を調整したり、セルの破損などによる電気の逆流などの事故を防ぐ装置が必要なのだが、それらを太陽電池自身で賄えるようになるのだ。
PXPの最高技術責任者、杉本広紀氏は、「ペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム太陽電池は、もっとも理論変換効率が高く、かつ軽量フレキシブル化が可能な組み合わせ」と話す。さらに「金属箔基板の優位性を活かして、全固体電池を一体化することで、単純に蓄電機能が付加されるだけでなく、電力制御が自動運転化され絶大な相乗効果が生まれます」ということだ。全体の構造がシンプルになればコストも下がり、「壁面ソーラーや車載ソーラーなど、これまでにない幅広いアプリケーションで、ソーラーエネルギーが手軽に利用できるようになる」との期待を述べている。
現在、住宅の屋根などに設置されている太陽光モジュールの変換効率は20パーセント前後が標準。NEDOの報告では、変換効率30パーセントのパネルを電気自動車に取り付ければ、それだけで1日40キロメートル以上走れるようになるという。PXPのタンデム太陽電池は「理論上」30パーセントを超えるとのこと。これが普及すれば、世の中は大きく変わるだろう。
ペロブスカイトの主材料はヨウ素、カルコパイライトは黄銅鉱、どちらも日本で多く生産されているので稀少な輸入材料に依存しない点もありがたい。本年内にペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム構造による軽くて曲がるソーラーパネルの量産性検証用パイロットラインが完成するということだ。
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