ヘルスケア

2023.11.28 13:00

中国などで拡大、謎の小児疾患の正体は「歩く肺炎」か

マイコプラズマ菌(Getty Images)

中国で、子どもを中心に謎の疾患が流行していることが先週報じられて以来、「歩く肺炎(walking pneumonia)」の主要因であるマイコプラズマ菌が注目されている。原因には呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症が挙げられているが、おそらく最も重要なのがマイコプラズマ菌だ。

中国メディアは、国内の小児科病院の一部が患者であふれていると報じた。肺炎症例の波は国内各地へと拡大。世界保健機関(WHO)は中国に対し、推定される感染源の詳細情報の報告を求めた。これまでのところ中国当局は、既知の病原体であるマイコプラズマ菌、RSウイルス、インフルエンザ、新型コロナウイルスを病原として挙げている。

マイコプラズマが原因の細菌性疾患は、症状が比較的軽く、発症しても歩けるほどであることから「歩く肺炎」と呼ばれているが、症状は数週間続くこともある。一般に入院を必要としないが、免疫が発達途上にある幼い子どもは重症化するリスクがある。

中国で原因不明の肺炎が拡大し、病院がその対応に追われているという報道は、新型コロナウイルス流行の初期を想起させるものだ。だがWHOの疫学者マリア・バンケルコフは24日のインタビューで「これは2019年12月と2020年1月の状況と同じではない」と語った。

中国以外でも、韓国とフランスで同様の肺炎症例が増加しており、主な原因としてマイコプラズマが疑われている。

韓国では、確認された症例数が10月中旬から11月中旬の間に2倍以上となっている。韓国疾病管理庁が発表した概要によると、11月第2週に急性細菌性呼吸器感染症で入院した患者236人のうち226人(96%)が、マイコプラズマ肺炎を発症していた。特に、新規患者の80%が5歳未満だった点が注目される。さらに当局は、韓国で寒い気候が早期に訪れたことが、症例の「急速な増加」に寄与した可能性を示唆した。
次ページ > コロナ流行による「免疫負債」も一因に?

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事