ビルに囲まれたバレーボールコートほどの広さの場所に、子供たちがサッカーボールで遊び、大人も楽しそうに語り合う。まるで公園のようだが、ここは実は交差点。スーパーブロックが生み出した、歩行者が優先される道路だ。
この取り組みを進めるバルセロナを、神戸市の職員らが訪れた。というのも、神戸の中心部にある三宮駅周辺の再整備で、駅のまわりを歩行者優先のエリアにしようと考えており、そこで、先進するバルセロナのスーパーブロックの実態を掴もうと考えたからだ。
碁盤目に区画された新市街地
バルセロナの街は、2000年以上の歴史ある「旧市街」が有名だ。だが、それをとり囲む新市街地にも特徴がある。一辺が約120メートルの正方形の街区が碁盤のように整然と並んでいるのだ。中世を代表する城郭都市であったバルセロナは、旧市街をぐるりと城壁が囲んでいた。だが、産業革命で人口が急増すると、城壁の外側に住む人が増え、1850年代には城壁が取り壊された。そのときに、壁の外側をどのような街にするのか設計図が描かれる。いまでいう都市計画だ。こうして現在まで続く碁盤目の街区がつくられていった。
そのバルセロナの新市街地で、縦横3×3の9つの街区を1つの単位として、その内側にある道路を歩行者優先とするというのが「スーパーブロック」の基本的考え方だ。
ただ、日本で言う「歩行者天国」とは異なっている。乗用車やトラックは、時速10キロメートルという制限を守れば、特別な許可なしで、この道路を走行できるからだ。
このように車と歩行者が混在すれば、交通事故の心配もあるのではと考えられるが、ところが実際に現地を視察した限り、かなり安全は守られているように思えた。
交差点の真ん中には、子どもの遊び場があるので、車は道路の端を通る。しかも、運転手はボールを追う子供が目の前を横切らないか、気を使いながら走行する。まっすぐな道路でも中央に街路樹が植えられベンチが設置してあるので、車はそれを避けるコースを進む。いずれにせよ車は歩行者に注意しながらゆっくりと進むしかない。
こうなると、店舗への商品搬入や住民が自家用車を使うなど、必要に迫られたときでない限り、車でここを通ろうと思わないにちがいない。ただ歩行者天国とは違い、商品搬入をしたければ、いつでも車を乗り入れられるという利点はある。
道路は車が優先、歩行者が横断できるのは、横断歩道や信号が青のときだけというのが当たり前だ。しかし、それを180度ひっくり返すのがスーパーブロックの考え方だ。あくまでも歩行者が優先されるのだ。
バルセロナ市では、このようなスーパーブロックの設置を、市内の20カ所ほどで進めているという。区域内の住民にとっては、憩いの空間が増え、車の通行も減るので、住宅価格が上がるという話もある。