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2023.12.08 11:00

クリエイティブドリブンで新たな事業を創造する──サービスデザイナーが描く未来

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新規事業創出を実現するため、企業活動にデザインの力を取り入れるデザイン経営が注目されている。デザイン経営の効果を最大化するには、「ビジネス」「テクノロジー」「クリエイティブ(デザイン)」の3つのスキルが有機的に結合したBTC型組織が求められるが、実際のところ、「ビジネス」と「テクノロジー」にウエイトを置いた取り組みを進めるケースが少なくない。

そんななか、クリエイティブドリブンで、新たな事業を創造することにこだわり続ける人物がいる。九州大学大学院でデザインストラテジーを学んだ後、大手企業でUI/UXデザイナーとして多くの実績を残し、その後もデザインコンサルティング会社やベンチャーなど活躍の場を広げてきた今村 健(以下、今村)だ。

現在、大企業の新規事業・サービス開発に特化した支援を行うデザインコンサルティングスタジオのNEWh(ニュー)でサービスデザイナーとして活躍する今村が、いかにしてクリエイティブドリブンの重要性に気づいたのか。その経緯を辿っていく。

順調なキャリアのなかで気づいた想い

「自分の力がどこまで通用するのか試してみたいという思いから、キャリアを重ねるごとに、さまざまな企業で経験を積んできました」

そう語る今村は、大学院修了後、大手電機メーカーやUXコンサルティングファームでUI/UXデザイナーとして活躍。デザイナーとして携わった複数のプロダクトがグッドデザイン賞を受賞するなど、輝かしい実績を残している。

その後は別の電機メーカーにて社内にデザイン思考を浸透させるプロジェクトや、ベンチャーでクリエイティブチームの立ち上げなどに携わったが、ここで今村はクリエイティブ領域に存在する、ある壁を感じたと話す。

「業績を追い求める企業では、中長期的な視点で社内に変革をもたらせていくクリエイティブ(デザイン)部門はコストとみなされてしまう。企業がデザインの力をどう捉えているかにより、デザイン組織の重要性や活動領域が制限されてしまうという現実を目の当たりにしました。

この経験を経て、仕事をしていくうえで、会社や組織がデザインの力を信じているかが、自分の働くよろこびやパフォーマンスに大きく影響するということに気がつきました。特にデザインのようなクリエイティブの分野では、自分が楽しくなければ大きな成果は出せませんから」

自らの仕事に対し暗澹たる想いを抱えていた状況が一変するのが、2022年のこと。今村の元に「NEWhに入社しないか」というオファーが舞い込んできたのだ。

「新規事業創造のフレームワークを説明してもらった際、『自分たちはクリエイティブ領域から事業を開発するのだ』という強い意志と、熱い想いがあることを感じました。別の機会に神谷(代表取締役 神谷憲司)にも会いましたが、Tシャツと短パン姿というカジュアルな装いで現れた彼の姿に、自然体で仕事をすることを大切にしている雰囲気が伝わってきたのを覚えています」

今村は、NEWhこそ自分が求めてきた環境だと確信し、転職することを決心した。
サービスデザイナー 今村 健

サービスデザイナー 今村 健

共創プロセスがあらゆる人の中に眠るクリエイティビティを呼び起こす

今村が仕事をするうえで大切にしているのが、戦略にストーリーをもたせること。この考えに至ったのは、ビジネスモデルのロジックをストーリー化することの重要性を説いた楠木 建の『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)との出合いがきっかけだったという。

「顧客価値を創出するためには、顧客がプロダクトをどう使ってくれるかをストーリーとして捉え、潜在的な課題やニーズを把握することが必要です。デザイナーとして、自分はこうしたストーリーづくりを大事にして仕事をしてきましたが、ビジネスサイドにもストーリーが重要であるという考え方にとても共感できました。『あったらいいな』という顧客視点のストーリーをビジネスモデルのストーリーへと展開していくことが、これから自分がやるべきことだと思えるようになりました」

ストーリーを大切にする今村の思考は、NEWhでも大いに活かされることになる。

同社が企業に行う支援は、一般的なコンサルティングファームのそれとは一線を画す。新規事業創出の第一歩として、アイデアやUI/UXデザインなどのアウトプットを、サポート側ではなく、顧客側が主体的に考える機会を設けるのがNEWh流だ。

しかし、ここで1つ疑問が生じる。顧客側でアイデアを考えるのなら、NEWhはコンサルティングスタジオとしてどのような役割を果たしているのか。

「お客様に対し、単に『アイデアを出してください』といっても当然うまくいきません。そこで私たちが培ってきた発想を広げるための手法を活用したり、新規事業のアイデアを発想するために必要なユーザーシナリオの作成手法を共有します。つまり、共創によるストーリーづくりの土台となる『場のデザイン』を行う。それが私たちの役割だと考えています」

クリエイティビティ(創造力)は、決して専門職の人材だけがもつ能力ではない。今村はクリエイティブとビジネス、それぞれのストーリーを共創しながら描く場をデザインすることで個人の中に眠っている創造力を引き出す重要な役割を担っているというわけだ。

クリエイティブの力を強く信じなければ未来は拓けない

NEWhに求められる役割は「共創のための場をデザイン」すること。それゆえ、サービスデザイナーは顧客を含むチームメンバーが、協働しながら新たな価値を創造する場を形成するスキルが求められる。

「どのようなプロセスで考え、行動すると新しい発想を生み出せるのか。それを突き詰めた先に、共創によるプロセスがどうあるべきかが見えてくる。だからこそサービスデザイナーは、徹底的に自分自身のクリエイティビティを高めることが必要だと考えています」

そしてもうひとつ、「クリエイティブドリブンで事業を創造する」というNEWhならではのカルチャーを理解することも重要なポイントとなると今村はいう。

「例えばビジネスサイドにいる人は、目標達成のためにやるべきことを明確にして、業務を割り振りながら、着実に取り組みを進めるやり方が身に沁みついています。一方、クリエイティブサイドにいる我々のような人間は、よりよいものを生み出すため、常に多様な観点を取り入れる余白を残し、カオス(混沌)を楽しみながら取り組みを進めていきます。NEWhには、こうしたクリエイティブドリブンで事業を創造していける人たちにジョインしてもらえるとうれしいですね」

最後に、今後の抱負についてたずねると「クリエイティブ職の人たちが働きやすい世の中をつくりたい」と笑顔で語った。

「正直なところ、ビジネス中心の資本主義の中では十分にクリエイティブの価値が認められていないのが現実です。こうしたような状況を少しでも変えていけるように、クリエイティブを起点とした活動でインパクトの大きな成果を出し続けていきたい。そのために最大限の努力をしていくつもりです。とはいえ、短期的な収益を見込むことが難しいクリエイティブ領域主導で物事を動かしていくのは簡単なことではありません。だからこそ、私自身がクリエイティブの力を強く信じて、取り組んでいくことが必要だと考えています」

クリエイティブのインパクトを世の中に示せば、その価値を認める企業は自ずと増えるだろう。今村、そしてNEWhの活動が、日本経済全体の競争力向上や社会課題の解決に大きく貢献することに期待したい。

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