「スヌン」というのは、韓国の大学受験において必要かつ一発勝負のような試験だ。日本で例えると、大学入学共通テストのようなものだ。最近、韓国でも一芸入試やAO入試のような「抜け道」もあるが、大多数の受験生がスヌンを受けることになる。
受験日の当日は、ほとんどの企業で出社時間を10時に遅らせる。受験生は試験会場に8時10分までに入室しなければならないので、朝早くから移動する受験生たちがラッシュアワーに引っかからないようにするためだ。これに合わせて株式市場や為替市場も通常は9時スタートだが、10時スタートとなる。
試験は、8時40分から国語、数学と続き、12時10分から13時まで昼食、そして13時10分から英語の聴き取りテストが始まるが、この時は航空機の離着陸も禁止される。今年は計94便のスケジュールが調整され、軍事演習も中断された。
英語の次は、韓国史、探求(社会・科学・職業探求)と続き、第2外国語・漢文で終わる。終わる時間は17時45分で、概ね午後6時に長い1日が終わることになる。
警察までが受験生にサービス提供
スヌンの日の「風物詩」は、何と言ってもパトカーから降りて受験会場に駆け込んでいく受験生の姿ではないだろうか。今年、警察は、全国の試験会場場の周辺に1万1265人の警察官を配備し、パトカーやオートバイなども2681台投入した。また、オートバイなどを所有している地域住民などもボランティアとなり、「受験生緊急輸送」というステッカーを貼って、受験生たちを試験会場まで送った。
警察庁の発表によれば、今年はスヌンの受験生に関連して、214件のサービスを提供したという。交通渋滞やタクシーがつかまらず困っていた受験生178人をパトカーやサイドカーなどで試験会場まで送ったり、受験票や試験に必要なモノを家に置いてきたりした場合(13件)もそれを送り届けたそうだ。
とにかく遅刻する受験生が1人も出ないように、スヌンの当日、地下鉄公社は、午前7時から午前9時まで集中配車をした。
各試験会場の前ではお祭りのように人が集まり、受験生たちが頑張れるように士気を高め、各教会や寺では受験生の親だけでなく、集まった人たち皆で受験生のためにお祈りをする。
韓国がなぜこんなにもスヌンの日を大事にするかというと、やはり小・中・高までは受験がないに等しいということがある。それなのに、急に大学に入るためには、全国の受験生そして浪人生たちと競わなければならないからだ。
受験生たちは、どこの大学に合格するかで、人生の分かれ道のような岐路に立たされる。なので、必死にみんなに認めてもらえるような有名大学に入ろうとする。いまは大学を出たところで、就職先が必ずあるとは言えない厳しい就職難ではあるが、やはりそれは有名大学を出た後に考える問題であって、試験に合格して入学できなければ悩む選択肢すらない。