経済・社会

2023.11.26 08:30

北京では何も見えない何も聞けない 対話と協議は本当に可能なのか

Aritra Deb / Shutterstock.com

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岸田文雄首相は16日、米サンフランシスコで中国の習近平国家主席と会談した。「戦略的互恵関係」の推進を再確認するなど、意思疎通を強化することで合意したという。日本政府関係者は「トップ同士で話し合えた意味は大きいし、方向性は間違っていない」と語る一方、「これからが大変だ」と語る。東京はともかく、北京で意思疎通の強化を図ることなど、至難の業だからだ。
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中国が大きくその姿を変えたのは、一度目の北京五輪(夏季・2008年)と二度目の北京五輪(冬季・2022年)の間だった。夏季五輪の開会式にはジョージ・W・ブッシュ米大統領、韓国の李明博大統領、日本の福田康夫首相ら100人余の世界のVIPが集まり、米中協調の時代を印象づけた。14年後の冬季五輪開会式では、韓国は閣僚を送ったものの、日本は橋本聖子参院議員という立法府からの参加になり、米国は政府代表団の派遣を見送った。冬季五輪の開会式に先立ち、習近平氏はロシアのプーチン大統領と首脳会談を行い、両国の蜜月ぶりを演出した。日本の専門家は「中国がパートナーを米国からロシアに切り替えた、象徴的な瞬間だった」と語る。

新型コロナウイルスが流行したこともあり、日中の対話チャンネルはほとんど封鎖に近い状態になった。ようやく、コロナの感染拡大が収まった今も、チャンネルはもとに戻っていない。関係者の1人によれば、北京の日本大使館が外務省本省に送る政務関係の電報が激減したという。中国が7月、「反スパイ法」を改正したこともあり、北京で本音を語ってくれる人は姿を消した。別の関係者は「コロナの感染が拡大する前の2019年ごろまでは、少ないながら、本音を語ってくれる中国人もいた」と語る。気心が知れた相手と1対1になり、閉ざされた空間で会えば、習氏の悪口を漏らす場面にも出会えたという。「今はとてもじゃないが、そんな会話はできない。自分たちは外交特権で守られているからまだ良いが、相手の中国人にどんな災厄がふりかかるかわからない」
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文=牧野愛博

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