欧州

2023.11.25 14:30

危機一髪、銃撃戦から退却するウクライナ兵のリアルな映像

だが、その日の午前中に戦った第47旅団の兵士たちは、重火力の支援はあまり受けられなかったようだ。同旅団が運用する十数両のレオパルト2A6戦車は1両も登場しなかった。ウクライナ軍の砲兵らが映っていたとしても、砲撃の様子は見られず、必然的に砲撃の音も聞こえなかった。映像に映っていた最も強力な火器は、兵士が携行するM-16とAK-47の自動小銃、それに携帯型の擲弾(てきだん)発射機だった。

しかし、第47旅団の兵士らは見捨てられてはいなかった。兵士らのうち3人が戦闘中に負傷し、女性の衛生兵が手当てをした。そしてロシア軍の車両が近づいてくると、分隊長が無線で退却を要請。これを受けて同旅団の米製M2ブラッドレー歩兵戦闘車2両が駆けつけた。

第47旅団は、200両近くのM2を運用する唯一の旅団だ。重量40トン、乗員3名のM2は装甲に覆われた車両内に歩兵8人を乗せ、強力な25mm機関砲で歩兵を支援することができる。

同旅団はM2を信頼している。「ブラッドレーは被弾しても、乗員は生き延びる」と、6月の攻撃で片足を失った第47旅団のミコラ・メリニク上級中尉は語った。

M2は攻撃も行う。数週間前、ロシア軍がアウジーイウカ郊外の中間地帯を南北に走る鉄道を初めて超えたとき、近くにいたM2が攻撃してくるロシア軍を25mm機関砲で撃破する様子を、ウクライナ軍のドローンがとらえた。

だが、第47旅団の歩兵分隊の小規模な戦闘があったこの日、ブラッドレーは攻撃のために登場しなかった。制圧射撃を行い、発煙弾を発射し、そして後部のスロープを降ろした。兵士らは負傷者を抱えてスロープを駆け上がり、そのうちの何人かは走りながら発砲した。

主要な戦線の後方に退却した第47旅団の兵士たちはM2から降りた。負傷者を収容しようと救急車が待ち構えていた。負傷していない者たちは抱き合って互いを称えたり、ショックと安堵で冷たい地面に倒れこんだりした。すぐに塹壕に戻るだろうということを、兵士らは間違いなく認識している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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