消えた戦車の謎
だが、T-90Aの数字はつじつまが合わない。ベレカーによれば「初期型のT-90のうち50両は保管庫にあることがわかっている」が、戦車の所在が掴めない理由となり得るすべてのことを考慮に入れて最も合理的な推計をしても、「まだ217両のT-90Aが行方不明だ」という。考えられる理由について、ベレカーはX(旧ツイッター)で投票を実施。約1300人のユーザーがこれに応じた。
回答者の約14%は、行方不明のT-90Aも保管庫にあるとの見解に票を投じた。だがもしそうなら、なぜロシア政府はT-90Aを保管しておく決定を下したのだろうか。ウクライナとの紛争が終結した後も小規模ながら近代的な戦車部隊を維持するための長期的な計画なのか。それとも、戦闘準備が整っていないためだろうか。
行方不明の戦車は首都モスクワの守備に当たっていると考えた人は約18%いた。プーチン大統領がロシアの国土をウクライナの攻撃から守らなければならなくなった場合や、北大西洋条約機構(NATO)との戦争が現実となった場合に備えて、緊急配備された予備戦力という位置づけだ。
20%強の回答者は、T-90Aはどこかの時点でひそかに改良され、T-90Sとして輸出されたとの見解を示した。T-90の輸出用派生型であるT-90Sは主にインドで運用されており、大半は国内製造だが、初期の124両はロシア製だ。アルジェリアも185両のT-90Sを購入している。ベトナムは2019年に64両の受領を完了した。アルメニア、トルクメニスタン、ウガンダもT-90Sを運用している。
輸出されたT-90Sの多くは新規に組み立てられた車両だが、全くの新造ではなく既存のT-90Aをロシアで改造した可能性が指摘されている。T-90Sの市場価格は450万ドル(約6億7300万円)と報じられており、戦車を現金化する強い誘惑にあらがえなかったのかもしれない。