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2023.11.24 11:30

アルゼンチンの新「チェーンソー大統領」 エネルギー大国へ猛進

アルゼンチンの現在の石油生産量は日量60万バレルほどとなっている。だが調査会社バーンスティーン・リサーチのアナリスト、オズワルド・クリントによれば、パタゴニア地方の3万6000平方kmほどのエリアにあり、世界2位の規模をもつシェールガス鉱区「バカ・ムエルタ(「死せる雌牛」)」をはじめ、有望な鉱区で開発を進めれば生産量は格段に引き上げられるという。

バカ・ムエルタの天然ガス埋蔵量は米テキサス州の「イーグル・フォード」鉱区や「パーミアン」鉱区に匹敵する300兆立方フィート(1立方フィートは約0.028立方m)にのぼる可能性があるが、これまで10%足らずしか開発されていない。YPFとマレーシアの国営石油会社ペトロナスが100億ドル(約1兆5000億円)を投じて液化天然ガス(LNG)輸出ターミナルの建設を進めるなど、開発への期待は大きい。

アルゼンチンでの石油や天然ガスの開発には米シェブロン、英BP、フランスのトタル、ノルウェーのエクイノールといった欧米の石油大手も進出しており、すでに内陸や沖合で掘削を行っている。アルゼンチンの東に広がる大西洋の海底下の地質は、数千km離れたアフリカ西部ナミビア沖のものと似ている(大昔、南米大陸とアフリカ大陸は陸続きだった)。ナミビアでは最近の試掘で大型の石油鉱区が見つかっているので、石油大手各社はアルゼンチンでの発見にも期待を寄せる。米エクソンモービルは今年、アルゼンチンにある約2000平方kmほどの権益について、売却の可能性を含めて見直すと発表しているが、ミレイの当選で残留を決めるかもしれない。

時期尚早なのを承知したうえで、アルゼンチンの「石油ブーム」で個人として最大の勝者になりそうな候補をひとり挙げるなら、アルゼンチンで発電や風力発電所、石油化学などを手がけるパムパ・エネルヒアのマルコス・マルセロ・ミンドリン会長(59)だろう。同社はアルゼンチンで石油を日量5万バレル生産しており、2200井を掘削できる鉱区を所有しているとしている。ミレイの当選を受けてパムパの株価も20日に18%上昇し、全体の17%に相当するミンドリンの持ち株の価値も4億ドル(約600億円)超に高まった。

国民は変革を求めている。ミレイは年間120億ドル(約1兆8000億円)にのぼるエネルギー補助金の削減や、価格統制や燃料不足の解消、近隣諸国から天然ガスを輸入(2022年は額にして50億ドル=約7500億円)せざるを得ない状況からの脱却に取り組む考えも示している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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