CEOs

2023.11.22 15:00

アップルのジョブズとOpenAIアルトマン、2つの解任は比較すべきものではない

安井克至
アルトマンのケースは、1985年のスティーブ・ジョブズとまったく異なっている。アルトマンは完璧なリーダーシップ能力と会社のためのすばらしいビジョンを示し、会社を前進させる方法を理解していた。取締役会とのコミュニケーションに問題があったかもしれないが、解任という過激な手段を取らずに内部で解決すべきだった。アルトマンの解任は、近代ビジネスにおける最大の汚点の1つに数えられるだろう。

皮肉なことに、それはアップルの取締役会がジョブズを解任したときと同じ感情だった。しかし、私は1985年以前のジョブズと多くの出会いがあり、彼が重要な従業員たちをどのように怒鳴りつけ、扱っていたかをこの目で見てきた。彼はやる気を引き出す達人だったが、部下たちの多くはジョブズの先見的なインスピレーションよりも、彼への恐怖を理由に行動していた。

ジョブズはアップルを去った後、NeXTを設立し、会社としてわずかな成功を収めた。指導者としてまだ未熟で、大勢のNeXT社員の前で彼が幹部を叱り飛ばすところを見たことがある。当時、ジョブズがまだどうやって人を率いるかを学習していなかったことは明白であり、それがNeXTの最終的な成否に影響を与えた。

しかし、NeXTでの経験、あるいは荒野をさまよう体験と私が呼ぶものが、彼を成長させた。1996年にアップルに戻った際、ジョブズは別の人間だった。アップルに復帰した2日目に私は彼と会い、ミーティングの後、これはアップル黎明期に私が相手にしたのと同じ男ではないと独り言を口にしたことを覚えている。彼は以前より謙虚で集中力があり、当時10億ドルの赤字で倒産寸前だった会社を率いる準備ができていた。

OpenAIによるアルトマンの解任を、ジョブズの1985年の解任と比較することはできない。アルトマンには会社の成長を引き続き助ける指導力がある。

しかし思い出してほしい。ジョブズが1996年にアップルに戻ったのは、アップルがひどい苦境にあり深刻なトラブルを抱えていたためだった。もしアルトマンがOpenAIに戻るにしても、会社を救うためにジョブズのような奇跡を必要とするような窮地に陥っていないことを祈るほかない。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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