ヘルスケア

2023.11.23 15:30

孤独は「1日15本の喫煙」に相当する健康への脅威

米国公衆衛生局長官のレポートの題名が、この問題を「彼らの」孤独と孤立の蔓延ではなく、「私たちの」と呼んでいることに注目してほしい。それは、孤独が世界的問題になっているにもかかわらず、同レポートは米国内で起きていることに重点を置いているからだ。このレポートでは、高齢者の社会的孤立が、メディケア(高齢者向け医療保険制度)の出費を毎年推定67億ドル(約1兆円)増やしていることや、従業員が孤独を原因に欠勤することで、雇用者に推定1540億ドル(約23兆円)の損害をもたらしていることに言及している。

そして、もしあなたが孤独を感じているなら、それはあなただけではない。レポートが引用している複数の研究結果によると、米国の成人の中で他人と強くつながっていると感じている人はわずか39%であり、米国の成人の約半数が孤独を体験しているという。

状況は過去数十年の間に悪化している。他の米国人を信頼できると感じている米国人の割合は、1972年の約45%から2016年には約30%へ減少していることを明らかにした意識調査の結果にも、このレポートは触れている。人々が一人で過ごす時間も増え続けており、2003年には1日あたり285分、月間142.5時間だったが、2019年には1日あたり309分、月間154.5時間へと増加している。

また、X(旧ツイッター)やティックトック、インスタグラムのフォロワーが何人いようとも、フェイスブックに写真を投稿するたびに他の人から「可愛いね」とか「全然歳をとらないね」とか「魅力的」と何度言われようとも、実世界の友達との社会的つながりは時間とともに着実に減り続けていることを、多くの調査結果が示している。

2003年から2020年の間に、友達と対面で過ごした時間は、月間平均30時間から10時間へと20時間も減った。そしてなんと、この減少は15~24歳の年齢層で特に顕著であり、これは未来にとって決して良い兆候ではない。

さらに厳しい現実を示しているのは、親密な友情を保っている人の数だ。親しい友人が4人未満と答えた米国人の割合は、1990年の27%から2021年の49%へと増えている。感情や悩み事を打ち明けられる親しい友人がいない場合、その感情と悩みはどこに溜まるのだろうか。
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翻訳=高橋信夫

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