地球の水はすべて、長期にわたる複数回の天体衝突によってもたらされたとする長年の定説がある。だが、彗星・小惑星と惑星全般に関する仕組みを詳細に調べたのは、今回の研究が初めてだ。彗星にはシアン化水素(HCN)が含まれると見られており、2022年には小惑星リュウグウの試料から元の状態を保ったアミノ酸やビタミンB3が検出されたため、この研究は時宜を得ている。これらはすべて、生命の構成要素となる物質だ。
生命の起源
英ケンブリッジ大学の研究チームは、彗星が生命の起源だと主張しているわけではない。学術専門誌の英国王立協会紀要に15日付で掲載された最新論文で、研究チームは彗星が生命の起源となる物質をどのようにして、そしてどこに、もたらすことが可能かを、数理モデル技術を用いて調べた。第一に、彗星は低速で進む必要がある。彗星や小惑星の速度が大きいと、惑星に衝突する衝撃が非常に大きいため、衝突で生じる大量の熱により、生命に不可欠な分子が破壊されてしまう。研究チームによると、上限値は秒速約15kmだが、これはかなり可能性の低い数値のように思われる。
「転々」とする彗星
研究チームによれば、彗星が十分に減速できるのは、惑星の周回軌道に引き寄せられては離れ、また別の惑星に接近・通過を繰り返し、惑星間を「転々」と移動する場合に限られる。彗星はこの間に減速し、最終的に1つの惑星に衝突する。これが起こる可能性があるのは、複数の惑星が近接して存在する恒星系内だけだ。論文の筆頭執筆者で、ケンブリッジ大学天文学研究所のリチャード・アンスローは「このように密に集まった惑星系内では、各々の惑星に彗星と相互作用して彗星を捕捉する機会がある」と説明する。「このような仕組みによって、前生物的分子が惑星に行き着くのかもしれない」
「第2の地球」探し
今回の研究によれば、Earth 2.0(第2の地球)の可能性のある惑星を探している研究者らにとって、これは重要な研究結果だ。探索対象とすべきなのは、低質量の惑星が他の惑星と接近した公転軌道にある恒星系だという。「地球上で生命誕生につながった分子は彗星からやってきた可能性があるので、同じことが銀河系内の他の惑星にも当てはまるかもしれない」とアンスローは指摘している。「天文学と化学の進歩を組み合わせて、すべての中で最も根本的な問題のいくつかを調査することができる現在は、心躍る時代だ」
(forbes.com 原文)