今回の景気刺激策の効果が疑問視される大きな理由のひとつは、直近のインフラ整備で期待された経済効果が全く得られなかったことだ。こうした失敗は、地方政府の危うい財政にはっきりと表れている。地方政府が重荷を背負い込んでいるのは、インフラ計画の資金確保を中央政府が地方政府に押し付けるのが常だからだ。
中央政府は、地方政府のインフラ投資会社である融資平台(LGFV)を通して借り入れを行うよう促している。最近のLGFVからの借り入れは期待通りの経済効果につながらなかったため、地方自治体は現在、巨額の債務超過に陥っている。中には、住民への基本的なサービスの提供も難しいほど財政がひっ迫しているところもある。一部の地方政府は、過去のインフラ整備に伴う債務の返済でLGFVからの新たな借り入れにすでに頼っている。
中国政府は地方の債務問題を受け、久しぶりにインフラ整備の費用を国の借金で賄うことを決定した。この方針は地方政府の財政負担を軽減し、少なくとも負担を増大させることはないかもしれない。だが、これから行うインフラ整備が、地方政府に負債を残すことになったこれまでのインフラ整備よりもいくらかでも大きな経済効果を生み出せるのかという疑問は残る。過去のインフラ整備は地方政府に巨額の借金を残した。仮に、これから行うインフラ整備が経済的効果を生むとしても、中国経済を動かすのに十分かどうかは定かではない。なんといっても、新たなインフラ整備の予算は18兆ドル(約2670兆円)規模の中国経済の1%にも満たない。