基本的に、砲手2人はアーム部分の中に入って戦うことになっていた。戦車情報サイトのタンク・エンサイクロペディアによると、「(壕などの掩体に)できるだけ隠れたまま、壁などの障害物越しに射撃する」ように設計されていた。
プレーイング・マンティスの動作はぎこちなく、結局、試作の域を出なかった。「制御装置はきわめて使いにくかった」とタンク・エンサイクロペディアは説明している。「乗員への影響も望ましいものではなく、走行中の車体の揺れで乗り物酔いをしたという証言も多い」
ドイツの技術者たちは、それでもなおクレーン兵器というコンセプトを発展させようとした。1970年代、ドイツの産業界はパンター駆逐戦車を開発する。これはレオパルト1戦車の車体に、先端に遠隔制御の対戦車ミサイルシステムを載せた、高さ18mの伸縮式クレーンを取り付けたものだった。
しかし、シークレット・プロジェクトというネット上のフォーラムの投稿によると、この駆逐戦車も、ミサイルを誘導している間の発射台の安定性、発射位置の設定や撤収に要する時間、全体的な費用対効果の悪さなど、さまざまな理由から最終的には断念されたという。
ロシア軍が復活させたクレーン搭載型対戦車ミサイルシステムに欠陥があるとすれば、これら以前の試みの場合と同様だろう。背の高いクレーンは、ミサイル誘導の基台としては安定性が不十分かもしれない。クレーン車両の展開などにも時間がかかるので、その間、運用部隊は敵の対砲兵射撃にさらされるおそれもある。
そのうえ、コストもかかる。新しいバケットクレーン車は50万ドル(約7400万円)くらいするかもしれない。使い捨てで運用するような車両でもないし、交戦地域では調達するのも容易ではないだろう。
(forbes.com 原文)