「本当に女性が活躍している会社」ランキングでトップに輝いた資生堂。2023年には、女性活躍推進に優れた上場企業を対象にした「なでしこ銘柄」を3年連続で獲得するなど、その取り組みは社会的にも高く評価されている。
同社は1990年から、法整備に先駆けて育休や時短勤務を実施するなど、女性が働きやすい職場づくりに努めてきた。取締役常務でチーフD&Iオフィサーの鈴木ゆかりは、「長年にわたる全社での取り組みの成果が表れ始めている」と胸を張る。
国内の女性管理職比率はすでに30%を上回るが、2030年までに、取締役を含むあらゆる階層の女性比率を50%にするという目標を打ち出している。挑戦的な数値とも思えるが、「女性の活躍がイノベーション創出につながると考え、男女比率を機会均等の象徴である50:50にすることを目指す」と言う。
「女性活躍は何かひとつの秘策があるわけではなく、複数の施策を組み合わせてようやく結果が出る。まずはトップマネジメント層の関与が大前提。そして女性が働きやすい環境の整備。また、女性自身や上司のマインドセットを変えていくことも重要です」(鈴木)
施策のひとつが、17年にスタートした女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」(以下NLW)だ。課長、部長、役員の各候補者に向けたプログラムがあり、これまで累計202人の女性社員が受講し、うち97人が実際に昇格を果たした。研修後は受講者の9割が「昇格意欲が高まった」と答えており、マインドセットへの効果は明らかだ。
会社側が女性活躍を推進しようとしても、当事者である女性が管理職になりたがらない、という声はさまざまな企業から聞かれるが、「それは本心ではない」と鈴木は指摘する。
「女性が管理職になりたがらないのは、“強いリーダーシップで部下を引っぱっていくカリスマ”といった画一的なリーダー像しか思い浮かべられず、自分はそうはなれないと尻込みしてしまうから。でも、本来リーダーシップのかたちは多様であるはず。だからこそNLWは、あるべきリーダー像の“呪縛”を解いて自分らしいリーダーシップを発見することを目指しているのです」(鈴木)
NLWでは、仕事を通じて達成したいパーパスを見つめ、徹底的に己と向き合うことで、自分ならではのリーダー像をつくり上げていく。自身も受講したというダイバーシティ&インクルージョン戦略推進部グループマネージャーの山本真希は、こう語る。
「共に受講したメンバーは、今も共通の悩みを相談しあえる仲間。社内のネットワークづくりは女性、特に管理職にとってはなかなか難しいこともあり、NLWはその貴重な場にもなっているのです」