D&I

2023.11.27 14:00

「本当に女性が活躍している会社」1位! 資生堂が示すリーディングカンパニーの矜持

チーフD&Iオフィサーの鈴木ゆかり(写真右)と、D&I戦略推進部の山本真希。女性活躍推進の牽引役として、社内外の啓発や課題解決を担う。

女性部下をもつ「上司」への教育も必須

課長候補者向けのプログラムでは、昇格対象者だけでなくその上司に対しても、バイアスの解消方法やコーチングスキルを学ぶセッションを実施する。上司のマインドセットも、女性リーダーを生み出すうえでの大きなカギとなると考えているからだ。
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「一般的に、女性は自分を過小評価する傾向が高いといわれています。当社でも、女性管理職の候補となる次の世代のクラスにヒアリングしたところ、『自分から手を挙げることはしないが、もしも管理職に指名されれば精いっぱいやると思う』という回答がありました。会社は、そういった女性の思いを丁寧に汲み取る必要があると思うのです」(山本)

同社に大きな学びをもたらしたのが、14年に打ち出した美容職の働き方改革、いわゆる“資生堂ショック”だ。育児中であってもスキルアップを図るため、時短勤務中の美容職にも遅番や土日の勤務を促したところ、意図に反して「子育て中の女性に優しくない」とセンセーショナルに報じられた。

「ただ、時間的制約があるなかでも最大限成果を出して貢献したいという女性もたくさんいた。『女性活躍=弱者を保護する』という発想になりがちですが、実力や意欲がある人が能力をフルに発揮できる環境を整えることが本来の女性活躍のあり方。この働き方改革により『保護するのではなく、活躍してもらう』という方向に舵を切ったことが、今につながっていると感じています」(鈴木)
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今年1月、男性が多い部署において30歳の女性管理職が誕生した。背景には、人事制度を従来の年功序列からジョブ型に変えたことも関係している。チャンスがあれば年齢や性別、入社年次にかかわらず実力のある人に任せるという機運が高まったのだ。

人事制度においては、評価基準の明確化を図るため、グローバル人事データベースを導入し、貢献度に対応した職務等級制度や処遇報酬制度を整備。管理職昇格審査も、外部の審査機関に委託するなど透明性を確保している。また、「サクセッションプラン」(後継者計画)においては、部長以上は後継者候補を3人育てるが、そのうち1人は女性を含むようにするというルールを設けた。こうした取り組みによって、課長や取締役に比べて難しいとされている部長クラスにも女性が確実に増えている。

「女性活躍をはじめD&Iの施策は、効果が表れるまでに時間がかかります。ですが今、腰を据えてそこに取り組まなければ、優秀な人材を確保できなくなるという危機感がある。女性活躍はもはやCSRではなく、経営戦略なのです」(鈴木)
10月に開催された「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」。資生堂は、企業部門の総合ランキングで1位に選ばれた。

10月に開催された「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」。資生堂は、企業部門の総合ランキングで1位に選ばれた。(撮影/小田駿一)


資生堂◎1872年、東京・銀座で創業。日本発のグローバルビューティカンパニーを目指し、現在は約120カ国で化粧品事業などを展開。ビューティ企業の売り上げでは世界5位。D&Iを重要な経営戦略の柱と位置づけ、日本国内では15年以上前から全社員の意識と行動の変革を促し、女性社員の人材育成を強化している。

文=音部美穂 写真=若原瑞昌

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