数え切れない物語を秘めて
未来へと向かうステーションホテル
「東京ステーションホテル」が、5年半にも及ぶ長い閉館期間を終えて新たに改装・開業を迎えたのが2012年10月3日。すでに10年以上の歳月が流れた。日本屈指の利用客と日本の陸の玄関口でもある東京駅丸の内駅舎内に位置するこのホテルは、以前にも増して改装された赤煉瓦棟が眩く見える。エレガントに、よりモダンに、圧倒的にインパクトの強いクラシカルな姿になったホテルを、同じく改装を終えて整然とした広い駅前広場からで写真を撮る人のなんと多いことか。建物自体が国の重要文化財としてあり、1945年の東京大空襲で破壊された南北の丸形ドームが再建されたことで建物としての美しさ、重厚感が増している。さらに2014年には東京駅開業100周年を迎え、歴史的な駅とホテルは共に歩みを続けている。
その「東京ステーションホテル」では、旅に欠かせないスーツケースブランド‘グローブ・トロッター’とのコラボレーションが始まった。11月1日からは、「グローブ・トロッター」オリジナルラゲッジ付き宿泊プランの予約受付が開始。12月~3月までの限定日予約は、ほぼ同時に‘予約完売’とのこと。ホテルもラゲッジも好評なのだ。
ホテルの客室は2階~3階(一部4階)に全150室が揃っている。それら客室の並ぶ廊下の長さにも驚かされる。都心に於いて低層階の建物はそれだけで贅沢に尽きるが、ホテルの空間は駅舎全長の335mを占めている。つまりホテルは横に長く、しかも各階の廊下にはアーカイブとしての貴重な写真やアートが100点ほど展示され、ヒストリーギャラリィの趣がある。その長い廊下には幾つものクラシカルな照明があり、各階ともその中にふたつだけ異なる色のランプ照明がある。それは‘ここがエレベーターホール’という案内でもあり、日本の伝統ホテルらしい細やかな気遣いにも心が和む。
復原されたホテルの建物内には、美しい南北ドームの周りにも客室が造られた。その南北‘ドームサイド’の客室は28室、他に、クラシック29室、シティビュー16室、パレスサイド61室、メゾネット7室、スイート8室、インペリアルスイート1室からなる。世界的に見ても、ターミナル駅という場所には物語が多く、たとえば別れや出会いの舞台になることも日常茶飯事。ワクワク感も、人生観も、またトラベラーの夢を運ぶスタート地点でもあり終点でもある…人それぞれのストーリーが展開される場だ。「東京ステーションホテル」では、川端康成、江戸川乱歩、松本清張、森瑤子などの多くの文豪に愛され、中にはこのホテルに長逗留をし、ヒット作となった作品を書き上げた作家もいる。