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2023.11.24 08:50

自然との触れ合いこそが持続可能社会への近道。脱炭素ソリューションプロバイダーへ

(写真左から)磯野 謙、長谷川雅也、川戸健司|自然電力

(写真左から)磯野 謙、長谷川雅也、川戸健司|自然電力

11月25日発売のForbes JAPAN2024年1月号の特集「日本の起業家ランキング2024」で3位に輝いた自然電力の磯野謙、長谷川雅也、川戸健司。
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再生可能エネルギー業界のSPA(製造小売業)である同社は業容をさらに広げ、顧客を脱炭素化に導くソリューション・プロバイダーへ進化を遂げようとしている。


取材場所に指定されたのは、神奈川県葉山町の海近い建物だった。自然電力の本拠は福岡県で、葉山に拠点はないはずだが、いったいなぜ。現地に着くと、「午前はみんなでアウトリガーカヌーをしてきました」と代表取締役のひとり、磯野 謙が意外な答えを明かしてくれた。

もちろん、遊んでいたのではない。聞けば、同社では四半期に1回以上、全役員が集まって自然に触れ合いながら研修を行うという。午前の研修は、日本を代表するオーシャンパドラーのケニー金子を招聘し、カヌーの歴史や金子の自然観の共有を含めて指導してもらう学びあるもの。「人間は自然の一部だという感性をもち、自然と一緒に時間を過ごしながらその理解を深めることは、僕たちのパーパスを成し遂げるために不可欠。この活動は創業以来ずっと続けてきました」と磯野は言う。

パーパスは「青い地球を未来につなぐ」。自然電力は、風力発電ベンチャー出身の磯野、長谷川雅也、川戸健司の3人が2011年に立ち上げた。再エネ発電所の開発からEPC(設計・調達・建設)、運用・保守、電力供給までを一気通貫で手がける再エネ業界のSPA(製造小売業)だ。
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国内外10カ国で事業を展開し、発電実績は原発1基分の1GWを超えるが、ここにきて事業のかたちには変化が見られる。系統用蓄電池事業やエネルギーテック事業など、再エネを有効に活用するためのテクノロジーを使ったサービスに業容を広げているのだ。23年10月にはVPP(仮想発電所)事業の子会社Shizen Connectも設立した。川戸が説明する。「キーワードはユーザーセントリックです。脱炭素化への要請が高まるなかで、電力需要家さんのニーズはすごい勢いで広がりました。それに応えるために、発電所だけでなく、新しい再エネの価値を届けていく必要がある」。

象徴的なのが、23年10月に締結した米マイクロソフトとのバーチャルPPA(電力供給契約)だ。再エネ由来の電力の代わりに非化石証書を供給するもので、海外では主流になりつつあるが、日本では22年に従来のFIT(固定価格買取)制度からFIP(フィードインプレミアム)制度に移行されるなかで活用が加速し始めた。マイクロソフトの日本でのPPA締結は今回が初めて。自然電力は環境価値を20年間供給する。

日本の地域課題に対する挑戦も始めている。農地の活用だ。長谷川が説明する。「太陽光などの再エネが大きく広がるなかで、その適地は減ってきています。一方、自治体さんには、荒廃農地や耕作放棄地がうまく活用されていないという課題がある。これをうまく組み合わせたい」。

ただ農地を整備して太陽光パネルを設置するのではない。目指すのは、再エネと農作の両輪を回すことだ。従来の太陽光パネルは平置き型のため必要な面積が多く、作物の日照が確保しにくい、トラクターを通しにくいなどの課題があった。そこで自然電力は、両面にパネルを搭載した縦置き型ソーラーの実証を進めている。

こうした取り組みを率先できるのは、自然を肌で体感しながら地球を持続可能にするために必要なものを追求し続けるカルチャーを醸成してきたからだろう。磯野は言う。「お客さんが欲しいのは電力そのものではなく、本質的な願いはCO2を削減して持続可能な世界をつくること。僕たちは、再エネのデベロッパーから脱炭素ソリューションプロバイダーに進化していく」


磯野 謙、長谷川雅也、川戸健司◎3人は2005年から同じ風力発電事業のベンチャー企業に勤務。11年の東日本大震災をきっかけとして、「青い地球を未来につなぐ」をパーパスに掲げ自然電力を設立した。

文=眞鍋 武 写真=小田駿一

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