欧州

2023.11.19 11:00

ロシア軍の歩兵戦闘車、自軍兵を誤って轢いた直後に撃破される

ロシアはジョージアで鹵獲したBMP-1Uを就役させず、保管することにした。その理由を理解するのは難しくない。BMP-1Uのシュクバル砲塔はウクライナ製の部品でできており、中隊が15両程度しかないBMP-1Uを運用しようとすれば、一部は修理用の部品取りに回す必要が出てくるからだ。

ロシア軍が今年、こうした兵站面の困難を受け入れてでもBMP-1Uを再就役させたのは、歩兵戦闘車を切実に必要としていることの表れだ。ロシアが2022年2月、ウクライナに対する全面戦争を開始した時点で、ロシア軍ではBMP-1が600両、BMP-2が2800両、BMP-3が400両ほど現役だった。

それから1年9カ月にわたって繰り広げられてきた激しい戦闘で、ロシア軍はBMP-1少なくとも500両を含め、BMPを2000両以上失った。さらに、ロシアの占領下にあるドネツク市近郊のウクライナ軍の防御拠点であるアウジーイウカの攻略に向けて、ロシア軍第2諸兵科連合軍が大規模な攻撃を始めてからの5週間で、損耗率は著しく上昇している。

第2諸兵科連合軍などの部隊は連日、壕に深く入ったウクライナ軍の第110独立機械化旅団や第47独立機械化旅団などの部隊に対して、戦車やその他の戦闘車両、歩兵部隊などを投入している。その兵力は数個旅団分の規模だ。

にもかかわらず、ロシア軍はアウジーイウカの両翼でごくわずかしか前進できていない。兵士は大量に死亡し、車両も数百両破壊された可能性がある。旧ソ連で製造され、ウクライナで改良され、ジョージアに売却され、ロシアに鹵獲され、ウクライナに投入され、そして自軍の兵士を轢いたあげく破壊されたBMP-1Uは、車両の墓場のようになっているアウジーイウカ周辺で、またひとつ墓標を立てることになった。

もっとも、恐怖にかられて運転操作が雑になってしまった車両乗員は、このBMP-1Uの操縦士だけではない。この戦争ではロシア側でもウクライナ側でも、焦った操縦士が、下車した仲間の兵士を車両で轢いてしまう映像がこれまでもたくさんあった。

戦争では誰もが常におびえている。防御力が心もとないBMPの乗員はとくにそうかもしれない。BMPの乗員は、爆発があれば即死する危険が常につきまとうのだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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