欧州

2023.11.19 11:00

ロシア軍の歩兵戦闘車、自軍兵を誤って轢いた直後に撃破される

BMP-1歩兵戦闘車。2022年8月、ロシア南部ボルゴグラード州で(AnBoris / Shutterstock.com)

BMP-1歩兵戦闘車。2022年8月、ロシア南部ボルゴグラード州で(AnBoris / Shutterstock.com)

2007年、ジョージア(当時の表記はグルジア)はウクライナからBMP-1U歩兵戦闘車を15両購入した。BMP-1Uは旧ソ連で開発されたBMP-1をウクライナが独自に改良し、火力性能などを強化したモデルだ。1年後、ロシアはジョージアに軍事侵攻し、ほどなくしてロシア軍部隊はBMP-1Uをすべて鹵獲したとみられる。

ロシアはこれらのBMP-1Uを点検したあと、どこかにしまっていたらしい。15年後、ロシア軍はその一部あるいは全部を引っ張り出し、前線向けの部隊に配備してウクライナの戦場に送った。

そのうち少なくとも1両が今月、ウクライナ東部ドネツク州アウジーイウカ周辺のウクライナ軍陣地に対して、自殺も同然の直接攻撃を仕掛けた。結果は笑劇のようなものだった。

BMP-1Uの乗員は、ウクライナ軍のミサイルを食らいそうだと感づいたのか、あわててBMP-1Uをバックさせる。だが、そこにはロシア軍の歩兵が、車両を盾にするようにして身を隠していた。兵士少なくとも1人は、13トン、9人乗りのこの車両に轢かれてしまう。死にはしなかったかもしれないが、おそらく重傷を負っただろう。

数秒後、ウクライナ軍の対戦車ミサイルがBMP-1Uに撃ち込まれる。戦場で起きたドタバタの、笑うに笑えないようなオチだった。

多くの人は一連の出来事のブラックジョークのような面に注目するだろう。たしかに、ウクライナの戦場で機械化歩兵の乗り物になっているこの車両は、戦争の非情さを物語ることにもなった。

1991年にソ連が崩壊したあと、ウクライナ軍は旧ソ連軍からBMP-1を2500両あまり引き継いだ。BMP-1は現在も、武装を強化したBMP-2に次いでウクライナ軍で2番目に多い歩兵戦闘車となっている。

だが、BMP-1には欠陥、それも大きな欠陥がある。装甲の厚さがわずか6mmほどと防御が弱いうえに、主砲の73mm低圧滑空砲は打撃力も不足しているのだ。

そこで、ウクライナの砲銃科学技術センターは、一部のBMP-1の砲塔を、はるかに強力な30mm機関砲を搭載した新しい砲塔に取り替えた。これにはBMP-1の火力を強化する以外に、剰余分を輸出するにあたって車両の価値を高める狙いもあったとみられる。

こうして誕生したのがBMP-1Uだった。ただ、砲塔の大型化にともない、歩兵の定員は8人から6人に減っている。
次ページ > 兵士が自軍の車両に轢かれる例は双方であとを絶たない

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事