ネゴシアン・マニピュラン(NM)は、契約農家から購入したブドウを使用する造り手のことを指し、大規模な大手メゾンに多くみられる。一方レコルタン・マニピュラン(RM)は栽培、醸造、瓶詰めまでを一貫して行う造り手で小規模生産者に多いのが特徴だ。
「ネゴシアンはやっぱり安定してますね」とか「最近レコルタンを開拓しているんです」などとサラリと言えたら、あなたはかなりのシャンパーニュ通に映るだろう。
業務形態として有名なのは上記2つだが、それ以外にも幾つかあり、今回特に注目したいのが、“コーペラティヴ・ド・マニピュラン(CM)”だ。組合に所属する農家のブドウを合わせて醸造を行い、協同組合のブランドで販売する形態だが、有名ブランドであるニコラ・フィアットがこの形態をとっていることは、実はあまり知られていない。
同社の創業は1976年であり、リュイナール社(1729年)やモエ・エ・シャンドン社(1743年)のような他の大手メゾンに比べて圧倒的に歴史が短い。この短期間にこれだけ規模を拡大し、知名度を確立させ、フランス国内販売数量No.1の売り上げを誇るまでに成長させた秘訣はどこにあるのか。10月下旬に来日されたチーフワインメーカー、ギョーム・ロフィアン氏に聞いた。
進化する共同体
ニコラ・フィアットの歴史は、1972年にアンリ・マッカールがシャンパーニュ醸造センターを創立したところに端を発する。当時はブドウの余剰収穫が続いていたため、その販売を確実なものにするために生産者の協力体制が求められたのだ。農家とメゾンの橋渡し的役割を務めていたアンリ・マッカールと、実力派実業家であるニコラ・フィアットの出会いにより、協同組合としての「シャンパーニュ・ニコラ・フィアット醸造センター」が誕生したのは1986年。その協力体制による成長は著しく、1995年には100万本の、2004年には1000万本の売り上げを達成した。現在も5000軒を超える協力農家との連携体制を維持しながらフランス国内販売数No.1という業績をキープしている。
「この短期間における成長は協力農家の尽力なしでは成し遂げることはできません。そして、農家との確固たる連携体制を築くには、ブドウを提供してもらうだけでなく運命共同体としてウィンウィンの関係を築くことが必須なのです」