食&酒

2023.11.24 13:30

9人のシェフが国宝松本城に集結 二夜限りの特別な宴の狙い

Delicious Journeys in Matsumoto Relais & Châteaux in collaboration with DINING OUT の様子(撮影=ナタリー・カンタクシーノ)

日本政府観光局が15日に発表した10月の訪日外国人客数は251万人(推計)を超え、パンデミック後初めて、2019年同月の実績を超えた。また、観光庁が発表した調査速報によれば、2023年7-9月期の訪日外国人旅行消費額は推計1兆3904億円。19年同期より17.7%増え、過去最高を記録した。インバウンドが活況だ。

都内を見ても、今、街は外国人であふれている。昭和レトロな新宿の飲み屋街「思い出横丁」は、日本のサラリーマンのたまり場ではなく「お客さんのほとんどが外国人」になっている。

コロナ禍からの脱却において、観光庁は急増する訪日客をもてなす体験の創出に力を入れている。今年1月より、地方や民間によるコンテンツ創出を支援する「観光再始動プロジェクト」を展開。現在日本の各地で、採択されたさまざまなイベントや事業が花盛りだ。

国宝松本城で至極のディナー体験

10月半ばには、国宝松本城で2夜限りの特別なディナーイベントが開催された。主催は、県内で旅館「扉温泉明神館」やレストラン「ヒカリヤ ニシ」などを手がける扉ホールディングス。同社も加盟する、世界屈指のホテル・レストランの会員組織「ルレ・エ・シャトー」のシェフ9人が協力し、“発酵”をテーマに長野の食文化を汲んだコース料理を提供した。
(撮影=ナタリー・カンタクシーノ)

(撮影=ナタリー・カンタクシーノ)

観光再始動プロジェクトは、「これまでに一度も実施されたことがないものなど、新規性が高く特別なものであること」「一般的なものと比較して、単価が2倍以上となる高付加価値化の取組」などを要件としている。

今回のディナーは、過去に一般イベントが開催されたことのない松本城で、9人のトップシェフが共演するとあり、価格は食事とペアリング込みで1人10万円という設定。希少な体験のせいか、2日で合計80席の定員は埋まり、そのうち約2割は海外からのゲストだった。

爽やかな秋晴れの日、日没の17時に地元の奏者による雅楽が響き渡ると、その夜が幕を開けた。まずは、城を象徴する「黒門」の前でアペリティフタイム。バカラのグラスに注がれたシャンパーニュとともにいただく3種のカナッペは、京都、神戸、沖縄で腕をふるう3人のシェフの味を生かしながらも、秋の信州を感じさせるものだ。
「神戸北野ホテル」伊井野昌洋シェフは、長野の伝統野菜である一本葱を使用(筆者撮影)

「神戸北野ホテル」伊井野昌洋シェフは、長野の伝統野菜である一本葱を使用(筆者撮影)

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文=鈴木奈央

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