ChatGPTのトレーニングにウィキペディア活用
2001年、誰でも書き込める無料百科事典ウィキペディアを立ち上げたウェールズは、現在もインターネットの世界で影響力がある。壇上でウェールズはChatGPTについて、ナンセンスな回答となるケースがあまりにも多いと批判。性能が高まっているとしつつも、「信頼できる情報源になるには、まだまだ遠い道のり」との見通しを語った。
ウィキペディアは、AIではなく人間のボランティアの手によって記事の執筆や編集がなされている。この点を念頭にウェールズは、「ウィキペディアは完全な一般的知性が働いている」と強調。その上で「異なる経験・背景を持つ何千人という人々が、思慮深く、何が真実かを見極めようと議論している」と語り、信頼性という意味でウィキペディアがChatGPTを凌駕しているとの認識を示した。
またウェールズは、ウィキペディアの記事が複製・改変・再配布可能で、商用利用できることを念頭に、ChatGPTのトレーニングにウィキペディアが活用されていることを「誇りに思う」とも述べた。
他方でウェールズは、ウィキペディアの記事の中で足りない要素を発見してもらう部分では、AIが活用できるとのアイデアを披露。文章自体の生成ではないものの、ウィキペディアの質を高めるためにAIが活用できる可能性を示した。
今年のウェブサミットの出展企業は、ChatGPTを運営する米オープンAIのAPIをプロダクト構築に利用しているケースが目立つ。それだけに、カンファレンスのオープニングナイトでウェールズがChatGPTに否定的な見解を示したことは、筆者自身驚きであった。
筆者も業務でAIを日常的に活用しているが、AIで完結させられる作業は現時点で存在しない。「正確さ」「信頼性」という意味では、ウェールズが言うように疑問符がつく。現時点では、AIと人間との「共創」が最適解なのだと感じる。