火山噴火によって大気中に放出された火山灰やガスは、太陽光を反射する「日よけ」のような役割を果たし、その結果、地球が冷却される。
樹木年輪の記録や歴史的資料によると、異常な寒冷期は、大規模な火山噴火と関連してきた。例えば、ある研究チームが「生存に最悪だった年」と評した紀元536年を中心とする540年前後や、13世紀末から19世紀半ばにかけて続いた「小氷期」のなかでも特に1275~1300年、1430~1455年、1600年頃などだ。
しかし、これらの寒冷な時期を引き起こしたと見られる具体的な噴火の規模や場所については、必ずしも明確になっておらず、定量化もされていなかった。この謎を解明するため、英セント・アンドリューズ大学のアンドレア・バーク博士率いる英国、米国、スイスの地球科学者チームは、グリーンランドと南極大陸の氷床コアの硫黄同位体を調査した。
火山噴火の際に放出される硫黄は、大気中において、硫酸などのエアロゾルを形成して太陽光を弱める結果、地球が冷却される。こうした硫黄同位体については、特定の火山から噴出された溶岩の化学組成と比較して分析することができる。
これまでは多くの科学者が、気候に広範囲に影響を及ぼすような噴火は、赤道付近で発生する必要があると考えていた。赤道付近で起きた噴火の場合、風のパターンと気流によって、火山灰とガスが地球全体に拡散されるからだ。
例えば、1815年にインドネシアで起きたタンボラ山の噴火は、欧州と米国に「夏のない年」をもたらした。また、1883年にインドネシアで起きたクラカタウ噴火や、1980~83年にかけて起きた、メキシコ史上最大とされるエル・チチョン山の噴火は、熱帯地方に異常気象を引き起こした。
1991年6月にフィリピン・ルソン島のピナトゥボ山が噴火した際にも、その影響が世界中に及んだ。20世紀に陸上で発生した噴火としては最大規模となったこの噴火は、地球の気温を0.5度も低下させた。