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2023.12.05 20:00

モビリティ社会をドライブするAGC ジャパンモビリティショーで披露した最新技術と展望

EV(電気自動車)や自動運転などの技術革新、社会課題の解決にむけた取り組みで100年に1度の変革期にある自動車業界。その最新技術を披露する展示会「ジャパンモビリティショー2023」が10月26日から11日間、東京ビッグサイト(東京・有明)で開かれた。

AGCは次世代モビリティ関連メーカーとしてブースを展開し、機能やデザイン性を高めたディスプレイ向けなど独自のガラス製造技術を紹介。AGCがモビリティ進化の波に乗るだけでなく、市場創出をリードしようと挑戦する姿を、Forbes JAPAN Web編集長 谷本有香による動画レポートと共にお届けする。


東京モーターショーから名称を変え、コロナ禍の中断を経て4年ぶりの開催となったジャパンモビリティショーのテーマは「乗りたい未来を、探しにいこう!」。国内外の自動車関連メーカーやIT企業など過去最多の475社が参加。会期中の一般来場者数は111万2000人に達し、大きな注目を集めた。

AGCはこれまで部品・機械器具メーカーとして出展してきたが、今回は、次世代モビリティ関連のカテゴリーに移り、トヨタ、マツダ、メルセデス・ベンツの未来カーが展示された同じホールにブースを設け、10を超える開発品を紹介した。

ガラスは車の進化の核となる「一等地」

AGCの展示ブース。モビリティ関連の様々な技術が紹介されたAGCの展示ブース。モビリティ関連の様々な技術が紹介された

開催2日日のメディア向け説明会に集まった多くの記者を前に、AGCオートモーティブカンパニー・モビリティ事業本部長の大西夏行は冒頭で、「皆様にお伝えしたいことはワンフレーズです」と切り出し語ったのは、「ガラスは一等地」というメッセージだった。

1907年に国内初の板ガラス生産を始めたAGC。ガラスという素材を起点にした技術力で、液晶ディスプレイや半導体などの電子部材、化学品、セラミックス、ライフサイエンスへと事業領域を広げてきた。そして、更なる成長を見据えて拡大する事業の1つがモビリティだ。
記者向けの説明会で、プレゼンテーションをするオートモーティブカンパニー・モビリティ事業本部長の大西夏行

記者向けの説明会で、プレゼンテーションをするオートモーティブカンパニー・モビリティ事業本部長の大西夏行

そこで重要となるのがCASEの技術。Connected=つながる、Autonomous=自動運転、Shared&Service=シェアリング、Electric=電動化に向けた機能を搭載する場所として「ガラスが一等地」であると主張。次世代モビリティでAGCが貢献する3本柱として、ディスプレイ、アンテナ、センサーを紹介した。

「安全設計と高い視認性、卓越したデザインを併せ持った」素材として大西が最初に取り上げたのは、AGCが世界で初めて市場に導入した車載ディスプレイ用カバーガラスだ。
車載ディスプレイ用カバーガラス

車載ディスプレイ用カバーガラス

運転席から助手席の両端にかけて緩やかにカーブした厚さ1.3ミリの一枚ガラスを液晶パネルに貼り合わせて大画面のディスプレイに。空調や音量、ナビゲーションなどの情報が画面タッチで得られ、ゲームや映画などの映像も楽しめる。

ガラスを曲面にすることで横からの視認性とデザイン性を高めたうえで、強度や安全性も確保。映り込みを抑えたり、指紋を付きづらくしたりする独自の表面処理を施すなど、いくつもの技術が詰まった製品だ。

CASEに貢献するディスプレイ、アンテナ、センサー用の高機能ガラスを披露

CASE技術の一つであるConnected(つながる)。より安全な協調型自動運転を可能にするためAGCが開発したのが、ガラス一体型5Gアンテナだ。自動運転化が進めば、電波をより受信しやすい場所にアンテナを置く必要がある。車のアッパーボディーのほとんどの表面積を占めるガラスにアンテナ機能を組み込めば、設置の自由度が高まり、受信性能とデザイン性を同時に向上できる。

「従来、室内側にセットするアンテナに、外からの電波を減衰させることなくガラスを透過させること。そのパフォーマンスを最大限発揮できるガラス一体型アンテナを開発しました」と大西。

協調型自動運転では、走行中に5G通信が“つながる”こと以上に、安定して接続を保つ“切れない”技術が重要であることを強調した。ガラス一体型5Gアンテナは、米国で遠隔操縦による無人走行レンタカーサービスを提供するHalo.Carの車に採用され、2023年1月から既に商用化されている。
ガラス一体型5Gアンテナ

ガラス一体型5Gアンテナ

3つ目の柱として紹介したのは自動運転システムの眼となるセンサー。AGCは、対象物に近赤外線などのレーザー光を照射し、返ってきた反射光の情報を解析することで、対象物までの距離や形を計測する光学センサーLiDARアプリケーション用の車載ガラス“Wideye™(ワイドアイ)”も開発した。

大西は「私たちが開発したLiDARアプリケーション用車載ガラス“Wideye™(ワイドアイ)”は、近赤外線の波長を確実に通す素材のガラスです。さまざまな形状で車に搭載できるようにしました。コーティング技術、樹脂との一体成形技術、電熱線ヒーターを実装する技術など、様々な部材を組み合わせてモジュール化する技術も保有し、多様なニーズに対応できます」と説明。

さらに、FIR(遠赤外線)カメラ対応のフロントガラスも紹介。フロントガラスの内側にFIRカメラと可視カメラを同じ位置に取り付け、センサー・フュージョン(複数のセンサーの情報を融合して、状況などを総合的に判断する技術)の提供により、高い認知精度を実現し、夜間でもヘッドライトの届かない遠方にいる人を検知する。遠赤外線を透過させるフロントガラスで、交通事故の低減に貢献したいと語る。
AGCブースでは、LiDAR向け車載ガラスの効果を体験できるコーナーが設けられた

AGCブースでは、LiDAR向け車載ガラスの効果を体験できるコーナーが設けられた

ガラスだけではない独自の多彩な複合技術は、これまで積み重ねてきた知見と挑戦の成果ともいえる。車載ディスプレイ用カバーガラスは、ディスプレイ事業本部が開発したモバイルフォンのガラスを大型化して車載用に進化させた。ガラス一体型5Gアンテナは、窓ガラス上にカーラジオやデジタルテレビのアンテナを付ける技術がベースになっている。

「コア技術をベースに開発を重ね、次世代モビリティの最新技術は生まれています。AGCの総合力が結集した技術といえます」と大西は表現する。モビリティは車に限らない。船舶や鉄道、建機、農機、ドローンなどへの搭載も見据えているという。

AGCが次世代モビリティで実現したい究極の目標とは

次世代モビリティの世界でAGCが目指すものは何か──。大西にそう問いかけると、「誰にも気付かれないこと」と答えた。

夏は日射熱を遮り、冬は車内の熱を外に逃しづらく、環境に優しく快適に過ごせる車内空間。自動運転でどんな場所を走行しても電波が切れない。高い技術力に裏付けられたガラスによる安全、快適で便利な日常。「すごい!とも感じない、それが当たり前であること。そうした世界をAGCが実現することが究極の目標です」。この先10年の間に叶えたいと話す。

10月28日から一般来場者を迎え、AGCブースには多くの車好きや家族連れが足を止め、最新技術の話に聞き入っていた。モビリティ社会は今後どのように進化すると思うかを大西に尋ねると、こう語り始めた。

「おそらく誰もはっきりとはわからないと思います。わからないからこそ、私はモビリティ事業のリーダーとして夢を語りたい。こういう世界が来るはずだ、だから私たちはこうなっていようと。夢を語り、みんながビジョンを持てば、開発の苦労もポジティブに変換できます。今回来場された方に、AGCは面白いものを創るね、夢を形に創り上げる会社だねと見ていただけたら、それが一番の幸せです」

メディア向け説明会の最後に大西が語ったのは、AGCの前身である旭硝子の創業者、岩崎俊彌の言葉だった。易きになじまず難きにつく──。あきらめることなく困難に立ち向かう創業の精神。そこから生み出される、次世代モビリティの進化のカギを握る高機能・高付加価値製品。ユーザーが未来の当たり前を享受できるようにと、AGCは創業から受け継ぐ熱意を「一等地」に込めている。

AGC Hub | Our Challenge Story
https://www.agc.com/hub/index.html

Promoted by AGC| photographs by Ryo Kosui | text&edit by Taisei Saito

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未来を素材の力で書き換えるAGCの挑戦とイノベーション