たとえ地理的な制約があったとしても、制空は重要な成功要因だ。ウクライナ軍の海兵隊は10月中旬からドニプロ川を渡り始め、クリンキという集落をロシア軍から奪取。そこに築いた橋頭堡(きょうとうほ)はヘルソン州南部へのウクライナ軍のさらなる進軍につながる可能性がある。この地でウクライナ軍が前進するごとに、すぐ近くのクリミア半島を占領しているロシア軍の支配力が緩んでいく。
ロシア軍の部隊とその輸送車列はもはや、ヘルソン州でウクライナ軍のドローンの監視と、そのドローンから発射の指示が送られる大砲やロケット弾による砲撃を免れたまま、平野を横断することはできない。バイクで別の場所に移動しようとして狙われた防空部隊や、ウクライナ軍がフラドキウカで爆破したトラックの不幸な乗員たちがいい例だ。
「ウクライナ軍はクラスター弾を使って絶えず砲撃してくる。最も重要なことは、投下物を搭載したFPV(1人称視点)ドローンやUAV(無人航空機)の大群を四六時中飛ばし、負傷者の避難や弾薬の輸送を妨げていることだ」と、あるロシアの従軍記者は書いた。
フラドキウカの待ち伏せ攻撃でロシア側にとって慰めとなるものがあるとすれば、それはもっとひどい結果になった可能性もあったということだ。最初のロケット攻撃が車列全体を立ち往生させることに成功していたら、犠牲者はもっと多かったかもしれない。
ロシア軍が最も憂慮すべきなのは、数台のトラックを失ったことではない。ウクライナ南部、特にヘルソンでのロシア軍の補給線に対するウクライナ軍の攻撃がエスカレートしている点だ。
ロシア軍の連隊が、ウクライナ軍の海兵隊をクリンキからドニプロ川の向こうに押し返すために、戦車などを使った反撃を計画できないのには理由がある。ロシア軍はこれらの連隊への補給に苦労している。「敵が橋頭堡周辺の上空をどれほど厳重に支配しているか想像してみてほしい」と、あるロシア軍兵士はSNSでつぶやいた。
(forbes.com 原文)