欧州

2023.11.17 09:30

ウクライナ軍、待ち伏せ作戦でロシアの弾薬輸送車列を攻撃

日下部博一

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昔ながらの待ち伏せ戦術だ。車列の先頭と最後尾を爆破し、他の車両とその乗員を残骸で挟んで動けなくする。そして生き残った者を狙い撃ちする。

完璧に事が運ばなくても、この戦術は壊滅的な打撃を与える。ウクライナ軍は2022年3月に首都キーウ近郊のブロバルイでロシア軍の戦車連隊を撃破するためにこの戦術を実践した。今年2月にはブフレダールでも繰り返した。

そして11月11日あたりには、南部ヘルソン州のフラドキウカで再びこの戦術を実行した。数十台のロシア軍のトラック(ウラルとカマズ)の車列がおそらく前線へと弾薬を運搬していたところ、ウクライナ軍のロケット弾が車列の先頭と最後尾で爆発した。

ロケット弾はウクライナ軍が運用する米製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)から発射されたM30だったと伝えられている。M30は1発あたり18万個のタングステン球破片を目標に浴びせる。ほんの一握りの破片でトラックに穴を開け、積み荷を破壊できる。

積み荷が弾薬であれば二次爆発も予想される。フラドキウカを走行していたロシア軍の輸送部隊の多くはロケット弾による奇襲を免れた。「この攻撃により、ロシア軍の隊員たちはパニックに陥り、攻撃を免れた車両へと散り散りになった」と独立調査機関コンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)は記述している。しかし、ロケット弾とその後に続く二次爆発によって、トラック16台が破壊され、ロシア兵25人が死亡したと報じられている。

この待ち伏せ作戦は、ほんの数週間前であれば不可能だったかもしれない。射程約64kmのM30を装填したウクライナ軍のHIMARSは、ロシアが占領する南部ヘルソン州全域を攻撃できるが、発射するには衛星やドローン、地上の部隊が合図を送る必要がある。今回の攻撃は明らかに偵察ドローンと連携を取っていた。ドローンは上空に留まり、ロケットが降り注ぐ中、被害の程度を見極めた。

ウクライナ軍のドローンはますますヘルソン州全域を自由に飛び回るようになっている。これはウクライナ軍が今夏、同州の制空権を獲得するために苦難に耐えた結果だ。

ウクライナ軍のパイロットや砲手、ドローン操縦士、電子戦の専門家らはロシア軍の防空網に揺さぶりをかけ、ドローンの運用が妨げられないよう、ロシア軍の電子戦システムを標的にした。

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翻訳=溝口慈子

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