第2回は、米Forbesによる最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング「Midas List」に日本人として唯一選出された投資家(2023年は55位)で、Sozo Ventures ファウンダー兼マネージングディレクターとして、シリコンバレーを拠点に、海外スタートアップの日本への進出支援を行っている中村幸一郎氏に聞いた。
──まず、中村さんが毎月日本に帰国している理由について聞かせてください。
私が創業したSozo Venturesは、アメリカで実績のある企業に対して、日本を切り口にしたグローバル展開をサポートしています。そのため、長期的に日本の競争力が低下する事態は避けたいと考えています。毎月帰国している背景には、日本の投資家に対しても、彼らのビジネスに寄与するようなイノベーションの情報や教育を与えることで、よりよい形で海外のイノベーションとの連携を実現するという狙いがあります。
「日本発のイノベーションはサポートしないのか」とよく聞かれますが、私たちは一貫して「日本から生まれ、アメリカ市場で実績を上げてグローバルプレーヤーになるような企業はぜひ支援したい」というスタンスを取っています。日本のベンチャー企業を見ると、知識不足から海外展開がうまくいかない例が非常に多いものの、それらは知識を与えれば修正できるともいえ、そこに注力したいと考えています。
このような考えは、ステファンとフレデリックという2人のスウェーデン人との出会いです。彼らは、2000年代後半に私がアメリカのシリコンバレーで「カウフマン・フェローズ・プログラム」というベンチャー・キャピタリスト育成プログラムを受けたときの同級生と先輩で、のちにクランダムというVCファンドを立ち上げ、音楽ストリーミングサービスのSpotifyに投資をしてヨーロッパのスタートアップ風景を一変させていきました。
クランダムの成功は、当時ブームに沸いていたヨーロッパのフィンテック業界をさらに後押しし、多くの企業がアメリカ市場に進出してグローバル企業に成長していきました。その過程でクランダムは世界有数のファンドに成長し、それに続くように有力なファンドが立ち上がって、ヨーロッパのベンチャーキャピタル(VC)業界が国際協調投資をしたことで、時価総額が10億ドルを超える“ビリオンダラーカンパニー”も次々と生まれていきました。その間はわずか10年ほど。はじめに数年かけて1つの成功例をつくり、好循環を生んで市場も拡大していく。そんなダイナミックな動きを日本でも起こせたらと考えています。