140年の時空を乗り越えて、今軽井沢に初めてのワイナリー誕生
軽井沢で待望の初のワイナリーがオープンした。軽井沢は、標高1000メートルの冷涼な気候のため、今までワイン用ブドウ生産には不向きな場所と言われていた。その軽井沢に、この10月「軽井沢アンワイナリー」がオープンした。古い教会の一部に醸造所を作り、伝統的な製法でワイン・スパークリングワインを生産予定で、今軽井沢の富裕層から熱い期待が寄せられている。生糸の相場や鉄道事業で財を成した実業家雨宮敬次郎は、明治10年にアメリカ、ヨーロッパを訪れ、開墾によってやせた土地から肥沃な土地に生まれ変わる姿に感銘、当時荒れ地だった軽井沢の地で、明治16年(1833年)にワイン用ブドウの栽培に挑戦した。
北海道やドイツ、アメリカからブドウ種子を取り寄せ、ワイン用ブドウ作りに挑戦したが、あまりにも寒い軽井沢の気候風土・土壌が合わず、3年の努力もむなしく失敗してしまった。その後、雨宮敬次郎は不屈の精神で、軽井沢にカラ松を700万本も植樹して、今の自然豊かな軽井沢の礎を築いた。
千曲川ワインバレーの挑戦
軽井沢に初のワイナリーが誕生したことにより、長野県の千曲川(ちくまがわ)ワインバレーが今後どのように発展していくのだろうか? 今後は、軽井沢をゲートウェイとして、東京方面から多くのワイン愛好家の来訪が期待されるだろう。今回は、千曲川ワインバレーに詳しい、レコール・デュ・ヴァンの田口あきこ先生に軽井沢アンワイナリーへの期待、千曲川ワインバレーの可能性についてお話を伺う。
軽井沢の泡を新しいトレンドに
鈴木幹一(以下、鈴木):軽井沢アンワイナリーでは、小諸市で自社栽培したシャンパーニュ品種(シャルドネ、ムニエ、ピノ・ノワール)でスパークリング・ワインを中心に醸造していくそうです。2種類をテイスティングしてみて、田口先生の感想はいかがでしょうか?田口あきこ(以下、田口):まず初めに、どちらのワインにも共通して言えることですが、きめ細やかな泡が持続的に優雅に立ち上り、口に含んでみると細やかな泡がムース状に広がって瓶内二次発酵の工程を経ていることがよくわかります。
ブラン・ド・ブランはシトラス、リンゴ、白い花、花の蜜、ミネラル、仄かな酵母由来のフレーヴァー。ピュアで瑞々しい果実味に爽やかな酸味が溶け込んでいて、アフターに感じるほろ苦さが心地よいですね。ブラン・ド・ノワールは黒ブドウ100%でできていますから、やはり外観がほんのりピンクがかっています。熟れたリンゴ、イチジク、木イチゴ、仄かな酵母由来のフレーヴァーが入り交じっています。ブラン・ド・ブランに比べるとこちらの方がワインのボリュームがやや大きく、コクがありますね。
どちらも辛口の泡ですのでどのようなお食事にも合わせやすいと思いますが、ざっくりとした方法では、コース料理の前半はブラン・ド・ブラン、後半をブラン・ド・ノワールで合わせるのも粋ですね。軽井沢アンワイナリーで醸造しているスパークリング・ワインは、お隣の小諸市内にある標高870mの畑で栽培しているシャルドネ、ムニエ、ピノ・ノワールを原料にしているそうです。