作中ではある意味「主役」とも言える、「雪豹」への怒りを露わにする兄役を演じたジンパは、監督の思い出を次のように語る。
「私は、『タルロ』と『轢き殺された羊』、そして『羊飼いと風船』など、ずっとペマ・ツェテン監督とご一緒させていただいたので、急逝の知らせを聞いたときは非常に驚きました。監督からはたくさんのことを学ばせていただきましたし、私たちに素晴らしい作品を何本も残してくださいました。なので、私たちもこれから一生懸命いいチベット映画をつくり続けないといけないと思っています」
実は、今回の東京国際映画祭は例年よりもさらに「アジア色」が濃くなっており、上映された作品の6割以上がアジアの作品で、映画祭のゲストの半分以上がアジアからの来日だった。そのなかでチベットを舞台にした「雪豹」が、東京グランプリに輝いたのもある意味象徴的な出来事だったかもしれない。
例年、どうしても日本人の観客が多いため、日本映画が受賞するケースが多い観客賞には、今年も日本映画、岸善幸監督の「正欲」(現在公開中)が輝いた。岸監督は併せて最優秀監督賞も受賞、あらためて日本映画の再評価にもつながる映画祭でもあった。
映画「正欲」では、新垣結衣が女優としての新境地を披露している / 映画「正欲」より(c)2021 朝井リョウ/新潮社 ©2023 「正欲」製作委員会
「第36回東京国際映画祭」コンペティション部門各賞受賞作品と受賞者
東京グランプリ 「雪豹」ペマ・ツェテン監督(中国)審査委員特別賞 「タタミ」ザル・アミール監督、ガイ・ナッティヴ監督(ジョージア/アメリカ)
最優秀監督賞 岸善幸「正欲」(日本)
最優秀女優賞 ザル・アミール「タタミ」(ジョージア/アメリカ)
最優秀男優賞 ヤスナ・ミルターマスブ「ロクサナ」(イラン)
最優秀芸術貢献賞 「ロングショット」ガオ・ポン監督 (中国)
観客賞 「正欲」岸善幸監督 (日本)
連載 : シネマ未来鏡
過去記事はこちら>>