欧州

2023.11.14 10:00

レオパルト2戦車とM2歩兵戦闘車、ヒットエンドラン戦術でロ軍の進撃阻む

したがって、ある戦闘で後退することになった場合、ロシア軍の戦車乗員は難しい選択を迫られる。ギアをリバースに入れて後進するとしよう。この場合、最も装甲が厚い正面を敵側に向けたままにできる。だが、速度は5キロ弱しか出ず、前進時の最高速度の10分の1ほどでのろのろと動くことになる。

他方、旋回して高いギアで走り去るとすればどうか。この場合、旋回には時間がかかるうえ、最も装甲が薄い後部を敵側にさらす格好になる。つまり、どちらにしても、ロシアの戦車は退却時にはきわめて脆弱になるのだ。

対照的にレオパルト2A6は、最も防御力が高い正面を敵側に向けたまま、時速30キロ強で後退できる。第47旅団のレオパルト2A6も先週、ミサイルで武装したM2少なくとも1両と組んでアウジーイウカ周辺のロシア軍陣地を襲撃した際、そうした機敏な動きを見せている。

ロシア軍のドローンが上空から監視するなか、ウクライナ軍のレオパルト2A6とM2のチームは、敵からの砲撃をぎりぎりのところで交わしながら、ロシア軍側に向けて突進する。だが、M2は敵弾を食らって動けなくなる。レオパルトは数発射撃し、バックして急いで後退する。その後、損傷したM2のもとには別のM2が救援に駆けつけ、牽引(けんいん)して運び去ろうとしている。

この戦闘で双方にどれくらいの人的損害が出たのかを評価するのは難しい。また、ウクライナ側が襲撃の目的を達成できたのかを判断するのも同様に難しい。とはいえ、ロシア側のウォッチャーたちが言っていることは注目に値する。

「ロシアの複数の軍事ブロガーは、ウクライナ軍部隊が10日、アウジーイウカ方面で逆襲し、以前失っていた複数の陣地を取り戻したようだと述べている」とワシントンD.C.にある戦争研究所(ISW)は報告している。ISWによれば、ある軍事ブロガーは「ウクライナ軍部隊は失った陣地を取り戻すために、一貫して反撃を試みている」とも言及している。

機械化部隊による機動的な襲撃は、ウクライナ軍がアウジーイウカ周辺でロシア軍の前進を頓挫させる方法の1つだ。こうした襲撃が続けられているのも、ひとえに第47旅団がなお積極的に攻撃していく姿勢だからだ。何カ月も前線で戦い続け、保有する戦車が減ってきているにもかかわらず。

ただ、そこでレオパルト2A6の急速バック性能が果たしている役割も軽視すべきではないだろう。第47旅団の戦車兵がヒットエンドランできるのは、すばやく比較的安全なかたちで後退し、敵の攻撃から逃れられるからなのだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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