アート

2023.11.15 09:30

イラストレーター黒田征太郎の絵が 「AIには描けない」理由

黒田征太郎

くろちゃんはくろちゃんのスタイルで

もう一人、黒田征太郎が「師」と慕う人物がいる。それは、グラフィックデザイナーでイラストレーターの和田誠だ。
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黒田は早川良雄デザイン事務所を経て、アメリカに船で渡り武者修行を開始する。ようやく海外への渡航が自由化された1964年頃の話だ。

当時、黒田は『話の特集』という日本の雑誌に、頼まれたわけでもないのに絵日記のような作品を送り続けていた。アメリカでの黒田の「無計画な日々」を記したものだったが、雑誌関係者の和田誠の目にとまり、いつしか連載扱いになっていたという。

後年、黒田が開いた展覧会に和田誠が訪れ、絵を購入したことがあった。もともと和田誠の大ファンであった黒田はどこか信じられない思いでいた。「付き合いで買うてくれたんちゃうか」。
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しかし、そのことをそれとなく和田に聞くと怒られてしまう。「くろちゃんの絵が本当にいいと思ったから買ったんだ。くろちゃんはくろちゃんのスタイルでいったらいいよ」。そんな風に和田からかけてもらった言葉は、黒田にとってかけがえのない財産となった。
今も黒田のアトリエには、和田誠のイラストがさりげなく飾られている

黒田さんの絵はAIには描けない

黒田の人生の歩みを振り返ると、人は人との出会いで変化し、あるいは辿る道も変わっていくのだということに改めて気付かされる。

上記では触れていないが建築家の安藤忠雄、作家の野坂昭如、ミュージシャンの近藤等則……と、ジャンルを超えて人生の転機でさまざまな出会いをし、それぞれに思い出深いエピソードがある。黒田は生涯の相棒であった長友啓典を2017年に失うが、今なお「1人で出来ることは何もない」と語る。

「勝つときもあれば負けることもある。もちろん失敗をすることもあります。そのくらいの感じでいいんじゃないですか。きばらないことです。結局、自分は“自分”なんです。考え過ぎて描いてもしんどいでしょ?」

今回の取材は、取材のお願いをするために伺ったところ、「じゃあ今始めましょうか」ということで急遽その場で始まった。
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文・写真=長井究衡

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