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2023.12.04

「循環する木」から始まる サーキュラーエコノミーの未来形

「hide kasugaグループ」代表・春日秀之

環境調和型ブランド「hide k 1896」でさまざまなプロダクトを展開する「hide kasuga グループ」。
多くの企業とのコラボレーションも進める代表にして工学博士・春日秀之が、そのユニークな事業と循環型経済の「これから」を語る。



大きさの違う3種類の器がある。やわらかな黒の表面には時を重ねたような風情が漂う。日本人の美意識“侘び”をコンセプトに、世界的建築家・隈研吾が手がけたデザインである。一見陶器かと思うが、手にとると軽く、感触は木に近い。

この不思議な風合いの器は、廃食用油 などから製造されたバイオマス樹脂と杉の 間伐材を50%ずつ配合してつくられている。間伐材とは、木に光や養分などが十分行 きわたるように間引き伐採された材木。ともに廃棄される運命にあった素材に再び命を吹き込んでできた食器である。この器を企画・製造・販売する「hide kasugaグループ」代表・春日秀之はこう語る。

「実はこの器、溶かして何度でもほかのカタチにできるんです。家の調度類、車の内装、ベンチ……。木を50%混ぜているので加工は難しかったけれど、非常に丈夫なのでいろいろなものに再利用ができます」

循環する木材「トランスウッド」。これは春日が開発する環境調和型素材のひとつだ。なぜこうした素材を開発するのか。

「環境問題は待ったなしの状況で、しかも日本は天然資源に恵まれていません。なのに輸入した素材を燃やしてしまう。この30 年間で日本の国力は衰え、円安で資源を輸入するのもコスト高になりました。こういう大きな時代の転換期に必要なのは新しいイノベーションです。私が取り組む循環型経済、つまり“サーキュラーエコノミー”はそのひとつになりうるはずなのです」

サーキュラーエコノミーとは、従来の大 量生産・大量消費・大量廃棄という一方通行のリニアエコノミー(直線型経済)に代わって、近年ヨーロッパを中心に注目されている新しい経済の仕組みだ。

投入する資源やゴミの量を減らすリデュースを行い、なおかつトランスウッドで説明したような資源の循環を図りながら、高付加価値ビジネスを展開する。春日は「サーキュラーエコノミーこそ日本経済が低迷から脱却するシステムだ」と主張する。

100年企業のSDGs精神


春日の環境への思いをたどると、1896年に現在の長野県に創業した麻問屋「春日商店」に行き着く。

「戦時下では麻や絹が統制物資だったのですが、くず同然の麻の表皮は統制外で 自由に使えることに2 代目は目を付けたんですね。特に麻はロープに使われるほど強度が高い。そんな麻の表皮を捨てておくのはもったいないと、くず麻とくず絹から 絹麻パッキンという資材を開発したんです。今でいうSDGsです」

環境に関心をもつきっかけになったのは、大学生として長野から上京した時だ。

「都内の空気、水がおいしくなかったのです。“ 環境は平等ではない”ことに気づき、これは将来的に環境がビジネスになると直感したのです」

当時、環境分野に関心を示す研究者 は少数派だったが大学院で研究に没頭し、一般企業に就職してからもその情熱はもち続けた。春日商店から社名変更した日本機材(現 NiKKi Fron)に春日が入社した2006年(2009 年に社長就任)、3代目の父親が市場拡大を進めていたのはフッ素樹脂のひとつPTFE。多くの電子機器 に搭載されるICチップを製造するときなどに使うもので、廃材は使用後に全て埋め 立てられていた。

4代目の春日は信州大学との共同研究によりPTFEをリサイクルする研究に着手。後に、2012年に家業 からスピンオフするかたちで創業したhide kasuga グループで引き続き研究し続けた結果、画期的なリサイクル技術を発明し、2019年に特許を取得した。

「日本のものづくりをブランドにするため にhide kasuga グループを創業しました。日本人には、愚直に物をつくっていれば それでいいという考え方が根強くあります。残念なのは、つくっているものは高品質なのに安く売ってきたこと。日本人には、価値に見合った価格で売るプレゼンテーションやブランディングのノウハウがまだ十分育っていないんですね。

特に環境調和型素材でつくった高付加価値製品は高い価格設定になりますから、ブランディングが必要。そこで製造だけでなく企画・開発から製造・販売、そして知財運用まで全般にわたるプロデュースにかかわるグループにしようと思ったのです」


パリで得たブランド哲学


そこで役立ったのは、パリを中心にヨーロッパで5年間生活した経験。

「ヨーロッパでは物をつくった人の考え方を重視します。製品に込めたコンセプトを、文化的・歴史的価値、時には哲学も交えて語り始める。それがブランディングにつながるんですが、製品コンセプトが素晴らしいと、価格が多少高くても売れるんです」

春日は、ヨーロッパには、コンセプトや哲学が社会をデザインするという考え方があるとみている。サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルといった概念がヨーロッパで生まれたのはそのためだと。

しかし、日本は恐れる必要などないという。すでにブランディングに必要な哲学、文化、歴史があるからだ。

「幕末に来日した外国人が江戸の町を見て驚いたんですよ。世界最大といわれた100 万人の町なのに、紙くず木くずひとつ落ちてないと。それを拾って売る人がいたからです。一方のパリといえば、当時は道路に家庭ゴミが散乱していた。

日本はリサイクルにおいて当時、世界の最先端だったわけです。その文化が戦後、大量消費・廃棄の産業構造にのみこまれて忘れ去られただけで、もう一度呼び戻し、再構築すればいいのです」

日本が基軸となって“ 新と旧”、“ 日本と世界” の文化や様式を編集し新しいライフスタイルを確立する。それこそが「令和モダニズム」だという。

それを定着させるには、市場の創出と実装が必要だ。そこでコロナ禍の 2020 年結成されたのが、産学官連携サーキュラーエコノミーコンソーシアム「Green Composite Hills by hide k 1896」である。

後継者を育てたい

活動のひとつとして昨年から始まったのは、長野市と千葉県市原市の中学校2校の生徒約400人に、隈研吾デザインのトランスウッド製ペンケースを配布するプロジェクト。1年後に回収して、ベンチにアップサイクル。翌年にはベンチを再度回収してアート作品にして美術館に設置予定だ。

そのプロセスを通して資源循環を体感してもらうのだという。その間に1 年間に3 回、生徒にアンケートを実施、環境への関心の変化を検証する。

「そうした体験を家で話してくれたら親をも啓発できる。さらに子どもたちが成人すれば環境調和型素材を使った商品に関心をもつ人がでてくるかもしれません。そうして、サーキュラーエコノミーの認知が広がり、市場が定着するのです。私が大学で教えているのはサーキュラーエコノミーの後継者を育てたいから。だから産官学が共同で進める必要があるのです」

今後はホテルやレストランなど、さまざまなパートナーと組み、冒頭に記した器で食事をしたり、トランスウッドでつくった部屋を体感したりして、サーキュラーエコノミーに触れてほしいという。

「環境問題は楽しみながら取り組んだほうがいい。長く続けられますから」

春日の言葉からは終始情熱がほとばしる。このパワーがサーキュラーエコノミーの実現を加速させる。

かすが・ひでゆき◎長野県長野市出身。パリ・東京・長野を拠点とし、素材を軸にライフスタイル全般へ価値を提供するコングロマリット「hide kasugaグループ」の代表。自ら設立したブランド「hide k 1896」の旗艦店を2019年に東京・表参道に開業した。

Promoted by hide kasuga グループ/text by Masamichi Nishidokoro | photographs by Shunichi Oda | edited by Tomoya Tanimura

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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