アジア

2023.11.16 10:00

東アジア各国が「人的資本」問題に直面 労働市場の未来とは

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東アジア・太平洋地域は、技術スキル、分析スキル、社会情動的スキルが組み合わさり、多様なスキルと革新的な開発の中心地として注目を集めています。

同地域では、64%の企業が人材の確保をビジネストランスフォーメーションの最大の障壁としています。一方、投資資本を障壁とあげた企業は28%に過ぎず、ヒューマンキャピタルが差し迫った課題であることがわかります。

また、同地域は、人材流動性と職場におけるダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの推進にコミットしています。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。


10億人以上の生産年齢人口を抱え、社会経済面の発展において多様性に富んだ東アジア・太平洋地域は、職場、仕事、スキル変革の最前線に立っています。

デジタルトランスフォーメーションやエネルギー転換といったグローバルな潮流に加え、サプライチェーンの混乱、地政学的な不確実性、労働人口の高齢化、経済的不平等などがこの地域の労働市場の展望に影響を与えています。

世界45カ国を調査した、世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2023」では、世界的な製造業拠点である中国やベトナムをはじめ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイなどの新興市場、そして、オーストラリア、香港特別行政区、日本、韓国、シンガポール、台湾など、東アジア・太平洋地域の12の経済圏が含まれています。

人材が真の変革の障壁

東アジア・太平洋地域では、投資資本の不足よりもヒューマンキャピタル(人的資本)が差し迫った課題として認識されています。

同地域で調査対象となった企業の64%が、ビジネストランスフォーメーションの主な障壁として人材の確保をあげており、グローバル平均の53%を上回ります。特に、タイや韓国などの国では、経営幹部の4人に3人が、変革の最大の障壁として人材不足を指摘しています。

一方、投資資本の不足が変革を阻害している主な要因だとする経営幹部は28%に過ぎず、グローバル平均は37%とこれをやや上回る程度です。世界とのかい離が顕著だったのはベトナムで、投資資本の不足に対する懸念が最も少なく、資本不足がビジネスに対する潜在的なリスクであるとした回答者はわずか13%でした。

では、東アジア・太平洋地域の脆弱性はどこに潜んでいるでしょうか。同地域の雇用主の最大の関心事は、質の高い人材の雇用です。

今後5年間で、人材の確保が難しくなるとする雇用主の割合は、前向きな見通しを立てている雇用主の割合をわずかに上回るに過ぎませんが(グローバル平均では前者が39%に対し、後者は36%)、同地域と世界基準が最も大きく異なる点は、人材の維持です。

既存の人材の維持に懸念を抱いている企業は27%と、グローバル平均の20%を上回っています。マレーシアと韓国ではこの傾向が特に顕著で、調査対象となった雇用主の3分の1以上が、今後5年間の人材確保について厳しい見通しを立てています。

Image: World Economic Forum

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文=Ricky Li, Insight Product Specialist, Centre for the New Economy and Society, World Economic Forum

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