「MEET YOUR ART」は、2020年に始動したアート専門のYouTube番組として、自身も表現者である森山未來がMCとなり、アーティストをはじめとした現代アートのプレイヤーを紹介し続けてきた。
そこから派生した立体的なコンテンツとして、2022年5月に恵比寿ガーデンホールにて「MEET YOUR ART FESTIVAL」を実施。「若手アーティストを知る機会の創出」を主なミッションの一つとして、既存のアートイベントの枠組みを超えた、音楽、食、ファッション、ライフスタイルを包摂した新しいスタイルを打ち立て、3日間で3万人を動員した。
そして、「Time to Change」をテーマに掲げた2023年、参加アーティストを約100名まで増加させ、動員規模も前年比の約33%増となる約4万人を達成。この数字は、国内最大規模のアートイベントである「ART FAIR TOKYO」が4日間で5.6万人を動員したことと併置して観測すると大きく見えるだろう。
コンテンツの質を落とさず、アートのドメインパワーを強化する
「MEET YOUR ART FESTIVAL」のIPとしてのアイデンティティは、アートに軸足を持つこと以外に、ミックスカルチャーというスタイルによって保たれている。大沢伸一やMUROによるDJ、CENT(セントチヒロ·チッチ)らによるスペシャルライブが披露され、一方では来場者はバーでお酒を楽しみ、レコードショップなどのポップアップを回遊する。今までのアート・イベントにはなかった混合性だろう。とはいえ、多チャンネルそれぞれを雑多に寄せ集めてキメラ的イベントにはなっていない。その証左の一例が、キュレーターの山峰潤也が手がけたエキシビション「Intersecting Perceptions -交差する眼差し-」だ。
西野達ら11名のアーティストを招いたこの展示は、山峰のステートメントから、VUCA時代にある現代で求められる視座の多様さへの思考を促すもの、と解釈できる。社会課題が透けて見える長尺の映像、インスタレーション等も並んだこの展示は、決して「簡単にわかるもの」とは言えない。
しかしそこで、「敷居を下げるために、コンテンツの質を変える」ことはせず、「MEET YOUR ART」のYouTubeチャンネルで各アーティストの紹介動画を公開し、それによって展示の手掛かりは提供することで、オーディエンスを突き放さないイベントとしてのUI設計を行っていた。