欧州

2023.11.12 10:00

旧式のレオパルト1A5約200両を手に入れるウクライナ、求められる新戦車戦術

2017年10月。1940年にギリシャが第二次世界大戦に参戦したことを記念した毎年行われる軍事パレードで(Giannis Papanikos / Shutterstock.com)

つまり、ウクライナは供与される戦車の弱点を軽減し、強みを生かしながら最善の使用方法を考えなければならない。約200両という3個大隊に配備できるほどのレオパルト1A5に関していえば、それはすばやく移動でき、後方に陣取って射程距離で射撃できる場所に配備することを意味する。
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「例を挙げるとレオパルトは精度や射程距離、速度でT-64より優れている」と、オレクシーという名のウクライナ軍の戦車砲手はウクライナ国防省の情報機関アーミーインフォームに語った

確かに重量40トン、乗員4人のレオパルト1A5の動きは速く、正確に撃つ。デンマークのある戦車教官がウクライナ軍の訓練生に、移動しながら戦うようアドバイスしたのには理由がある。レオパルト1は「走行と射撃に適している」とその教官は語った。

ドイツの戦車メーカー、クラウス・マッファイ・ヴェグマンは、当時世界でも有数の戦車砲だった英王立造兵廠が開発した105mmライフル砲L7をレオパルト1A5に搭載した。最新の120mm砲に比べると威力はやや劣るものの、生産から40年経った今でもL7は効果的な兵器だ。
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だがレオパルト1A5の射撃能力がこれほど優れているのは、砲だけが理由ではない。砲や砲安定装置、照準装置、コンピュータ制御の射撃管制システムなど、この戦車に統合された戦闘システム全体のおかげだ。

ドイツ軍とデンマーク軍がかつて運用していたレオパルト1A5は射撃管制システムEMES-18を搭載しており、このシステムはレオパルト1A5よりはるかに重量のあるレオパルト2にも採用されている。ベルギーがウクライナに送る30両のレオパルト1A5は独自のSABCA射撃管制システムを搭載している。

EMES-18は何年経っても最高の射撃管制システムの1つだ。レーザー距離計と弾道計算機が組み合わされている。静止している状態で砲の照準を合わせるには、砲手は照準装置をのぞきながらジョイスティックで十字線を標的に合わせ、レーザーを発射してコンピュータに射程距離を計算させ、それから砲を発射する。

EMES-18は、コンピュータがレーザーから得た射程距離データに基づいて砲の仰角を自動調整する。砲手が自分で正しい角度を計算する必要はない。また、コンピュータの計算処理は高速で、レーザーの反射を読み取ってからわずか1秒で砲の角度を調整する。

戦車か標的、あるいはその両方が動いていると、射撃はやや難しくなる。結局のところ、射撃を指揮しなければならないのは砲手だ。EMES-18も風や気圧、そして最も重要な戦車に対する標的の動きを計算して自動的に砲を誘導する。

EMES-18の性能で際立っているのは、レーザーからのデータなしで標的の動きを計算できることだ。砲手が動く標的に十字線を合わせてボタンを押すと、EMES-18はレオパルト1の砲塔のまわりを1、2秒かけて測定する。
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翻訳=溝口慈子

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