「ネヴェラの開発中に、このクルマはおそらく、後退でも世界最速のクルマになるだろうという考えが開発陣の頭に浮かびましたが、その時はみんなで笑い飛ばしました。このクルマの空力、冷却、安定性は、当然ながら、高速で後退するために設計されていませんから。しかしその後、実際にやってみたらどんなにおもしろいだろうという話になったのです。シミュレーションの結果、150メートルph(約241キロメートル/h)以上の速度が出せることはわかりましたが、どのくらい安定して走れるか、はっきりとわかりませんでした。私たちは未知の領域に足を踏み入れることになったのです」
この言葉だけで、ブガッティ・リマックが世界最高の自動車会社であることが、わかるというものではないか。
テストドライバーのドルンダックが「明らかに慣れが必要だった」というのも当然だろう。当惑しながら、彼は次のように語った。「景色が瞬く間に遠ざかっていくのを見ながら、普段急ブレーキをかけたときと同じような感覚で、首が前に引っ張られるように感じました」
聞くだけで気持ちが悪くなりそうだ。このような記録挑戦はそれほど難しくないように思えるかもしれないが、実際はクルマを後退させながら安定させるためには、かなりの技術が必要だ。
バドルンダックは次のように続ける。「バランスを崩さないように注意しながら、ステアリングを繊細に動かし、バックミラーで進路とブレーキポイントを確認して、その間ずっと速度に注意を払わなければなりません。クルマの設計から見れば、まったく不自然なことだったにもかかわらず、ネヴェラは楽々とまた新たな記録を打ち立てました」
(forbes.com 原文)