欧州

2023.11.11 12:30

ウクライナの新たな突破口候補に ドニプロ川左岸で海兵隊が前進続ける

安井克至
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「この兵站回廊はウクライナによる(ロシア占領地の)解放が進むごとに狭くなっていく」と、ワシントンD.C.にある欧州政策分析センター(CEPA)の上級研究員ジャン・カルバーグは説明している。

カルバーグは「冬が近づくにつれて、メリトポリ以西の兵站の状況はますます悪化していく可能性が高い」とも予想している。ただ、状況はすでに悪いとみられ、ロシア軍はドニプロ川左岸の部隊への補給に苦慮している。

東部ドネツク州から転戦してきたウクライナ海兵隊の第35、第36、第38各海兵旅団の部隊は、10月19日からクリンキ一帯に上陸し始めた。その直後、左岸に配置されているロシア軍の自動車化狙撃連隊には、逆襲して海兵隊部隊を川の中に押し戻せたかもしれない機会があった。

だが、クリンキに進んできたロシア軍の車両は、ウクライナ軍のドローンの餌食になった。T-72戦車少なくとも1両もやられている。ロシア側の反撃が失敗するごとに、ウクライナ軍が舟艇や水陸両用車両でより多くの兵士、あるいはより重い装備を渡河させる機会が広がっていった。もしかすると浮橋(ふきょう)も使われたかもしれない。

渡河作戦は空からの攻撃にきわめて弱いが、ヘルソン州のドニプロ川上空で航空優勢を確保しているのはロシア側でなくウクライナ側だということがすぐに明らかになった。ウクライナ軍は超低空でのロケット弾攻撃のためにMi-24攻撃ヘリコプターも投入した。ロシア側のある観察者はMi-24による攻撃を「大胆な戦術」と評している

ヘルソン州でのこの反転攻勢は2カ月目に入り、さらに拡大・加速している。ロシア側の情報筋は今週、ウクライナの海兵隊部隊がクリンキの西方の2つの集落、ポイマとピドステプネで新たに上陸したと報告している。

冬が近づいている。ウクライナでは冬になると地面がぬかるむ。東部のバフムートやクレミンナ、アウジーイウカの周辺では黙示録的な機械化戦が繰り広げられてきたが、今後、車両の車輪が泥にとられるようになると沈静化に向かうかもしれない。

クリンキの海兵隊部隊にとっては、泥はさほど問題にならないだろう。彼らは10〜15人のチームで主に徒歩で前進するので、天候が悪化しても反攻を継続できそうだ。

ウクライナ軍の将官オレクサンドル・タルナウスキーは、CNNのインタビューでこう語っている。「前進する際に天候は深刻な障害になり得る。しかし、わが軍の部隊の前進方法を考えた場合、車両を使わず前進することがほとんどなので、この段階の反攻に大きな影響があるとは思わない」

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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