「わっ、かっこいい!」
京都らしい落ち着いたムードの庭園におかれた、鮮やかなレッドのクラウン スポーツを目にした角野隼斗の口から感嘆の言葉が飛び出した。
現在28歳の角野は若手のピアニストとして注目を集め、海外でのコンサートやオーケストラとの共演などグローバルに活躍するアーティスト。クラシック音楽の世界に新風を注ぎ込む挑戦、そして2023年4月からNYに居を構え世界に羽ばたこうとする姿勢から、カルチャープレナー(文化起業家)にスポットライトを当て、後押ししようとする「CULTURE-PRENEURS AWARD 2023」において、トヨタのCROWNが共感した人物におくる「CROWN特別賞」を受賞した。
大変光栄です、と話す角野だったが、「クラウンの名前は知っていましたが、正直にいうとクルマに詳しくないので、クラウンがどのようなクルマであるのかというイメージまではありませんでした」と恐縮しきり。
1955年に初代クラウンが発売されてからの長い歴史のなかで醸成された、クラウン=高級セダンのイメージも、角野は持ち合わせていない。つまり、この日のクラウン スポーツとの対面が、クラウンとの初めての出会いであるともいえる。先入観なくクラウンに触れた角野はなにを感じたのだろうか。
「クルマの外観に関していうと、第一印象として曲線的な美しさを強く感じました。グランドピアノも大きな曲面がデザインされているので、同じような美を感じます。ピアノの場合は、素材が木なので複雑なカーブは描けませんが、クラウン スポーツはさまざまな曲面に加えてところどころに直線が混じって構成されていて非常に立体的に作られています。実際のクルマの大きさよりも、存在感が大きいな、と感じました」
滑らかな面やシャープな面で変化をつけたことで躍動感を表現し、さらに陰影までもデザインされた側面や、ワイド&ローを強調した力強い後ろ姿といったクラウン スポーツを特徴づけるエクステリアを見た角野は、佇まいとしての存在感と滑らかな曲線の組み合わせに注目。
「クラウンに乗る人がどんな人かというイメージを僕は持ち合わせていないのですが、フラットな意見として20代が乗っていても似合うクルマだと思います。僕自身も好みなので、乗りたいなと感じました」
“存在感が大きい”とは印象が強いということですか、と尋ねると角野は首を振る。強い、ともまた違う、しっかりとした質量をもったものがそこにあるという印象だという。その感覚は、ショートホイールベースにより表現した凝縮感からもたらされたのかもしれない。
タイヤの上の黒いホイールアーチの色は「ピアノブラック」と呼ばれているんですよ、と伝えると、角野は「確かに! このツヤのある黒はピアノらしいですね」と受け、続ける。
「この後ろのタイヤの上にはかなりボリュームがありますね。タイヤが地面を蹴って走る筋肉のようなイメージ、ですか。そうですね、筋肉的っていう表現はとてもしっくりきます」
キャビン後端を絞り、張り出すようにデザインされたリアフェンダーにも角野はその指で触れていく。ダイナミックで低重心な印象を高める、クラウン スポーツのエクステリアデザインにおける重要なポイントだ。そんなクラウン スポーツの印象を、角野が良く知る領域である音楽で例えてもらった。
「ダイナミックで質量感があるクルマですよね。でも、めちゃくちゃフォルテが続いてガンガン弾く、というのともちょっと違うような気がしていて。優雅な品格がありながら、でもダイナミックで優美さがあるような曲……、例えばショパンの“英雄ポロネーズ”はイメージが近いですね。すごくマジェスティックな曲なのですが、音量としては実はそんなにガンガン弾くような曲ではないんです。音が響き渡る優雅さがあって、ダイナミックなところも同時に存在するところが、クラウン スポーツの印象と似ていると思います」
2022 年のフジロック・フェスティバルで、 「クラシックの中にあるロックの要素を届けることが、一番ロックだ」と考えた角野がフィールド・オブ・ヘブンに集うロックファンの前で演奏した楽曲のひとつが、ショパンの「英雄ポロネーズ」だ。このとき、演奏後に角野は聴衆の大きな歓声と拍手を浴び、安心したように微笑んだ。
「クラシックは普段あまり聞かないけれど音楽好きである、という人にクラシックの面白さをどう届ければいいかということをあのときは考えていたように思います。演奏する前はどういう反応をされるんだろうと怖かったですけど、面白がって見てくれた人もたくさんいたことを感じました。それは僕にとってはやりがいのあることです」
伝統に縛られない、自由で挑戦心あふれる角野の姿勢を色濃くあらわすエピソードだ。自らのバックグラウンドはクラシック音楽にあると言い切る角野が、「クラシック音楽の文脈、コンサバティブな世界のなかでいかに新しいことに挑戦していくかということをずっとやっています」と語る言葉は、いま、がらっと生まれ変わったCROWN、そのDNAに刻まれた“革新と挑戦”というフレーズにピタリと重なる。
さらに、そんなクラウン スポーツでドライビングを楽しんでいるシーンをイメージできる角野自身の演奏があったら紹介したい、そう恐る恐る尋ねてみると、角野は気を悪くする様子もなくYoutubeチャンネル「Cateen かてぃん」にアップされているものからピックアップしてくれた。その曲は、まさにそのタイトルも新生クラウンとオーバーラップする「胎動(New Birth)」だ。
ショパンのエチュードOp.10-1からインスピレーションを受けて角野が作曲したオリジナル曲。右手で奏でる繊細で滑らかなアルペジオ、左手で力強く弾く主旋律が織りなす感動的な演奏。
世界最高峰の舞台とも言われるショパン国際ピアノコンクールに角野は2021年に挑戦し、ファイナル直前の3次予選まで進出した。本戦に出場できなかった悔しさと同時にこみ上がった、自身のなかにある新たな決意を込めた曲がこの「胎動(New Birth)」だ。
「コンクールの直後に作りました。もう一曲「追憶」という曲が対になっているんですが、「追憶」は過去の記憶とリンクした曲で、「胎動」は逆に過去を見ずに未来を見るんだ、と。自分が新しいものを作っていくぞという意志がこもっている曲ですね。音としては、うねるような感じやダイナミックさが特徴です。終盤に一番盛り上がるところがあるのですが、特にそこでクラウン スポーツをイメージしながら聞いてもらえるといいと思います」
2023年4月に新しい刺激を求めてNYに移り住んだ角野。ジャズクラブでセッションを楽しみ、憧れのピアニストに会いアドバイスを貰うなど、積極的に活動している。
「新しいことに挑戦するということをNYに行く前からずっとやっていたわけですが、時には自分がやっていることが正しいのか不安になることもありました。しかし、いま自分がしていることをより極めて行くことが進むべき道なんだろうな、ということが見えてきた感覚がありますし、自分がこれからどう行きていけばいいかというところへの、パワーとエネルギーをもらっています。それはNYに住んで得られた、大きいことです」
今後は世界でさらに活動していくことと同時に、自身のオリジナル曲を作っていくことで自分の世界観を発信していきたいと語る角野。世界各国へと展開していくクラウン同様に、今後どのような刺激を受けて進化していくのか、期待を込めて見つめていきたい。
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「Finding the New Value in Japan」