2023年9月に第一版が発表された自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に日本企業はどう向き合うべきか。TNFDタスクフォースメンバーの原口真が解説する。
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、国連開発計画(UNDP)などの団体の提唱によって2021年6月に発足した国際イニシアチブだ。企業や金融機関に向けた自然関連のリスク管理・情報開示フレームワークを開発している。これは、ビジネスや金融と自然との関係を見えるようにするための「新しいメガネ」のようなもの。現在の自然を損失するネガティブな状況から、回復軌道にのせるポジティブな方向に、世界のお金の流れやビジネスのやり方を変化させていくことが主な目的だ。
規模の大小や業種業態を問わず、世界中の誰もが使える共通のフレームワークを目指して、開発にあたってはオープンイノベーション型のアプローチを取っている。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が開発中の新しいグローバルなサステナビリティ開示基準など、類似のベストプラクティス基準やツールとの整合性を取れるように連携していることはもちろん、ベータ版をこれまでに4回発表しており、市場参加者のフィードバックをもらいながら取り組んでいる(第一版は23年9月に発表)。
フレームワークは、先行している気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を踏襲し、「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクトの管理」「測定指標とターゲット」を4本柱に据えている。ただし、CO2などのGHG排出量を共通の測定指標として測ることができる気候と違い、自然の場合は多種多様なメトリクスでとらえていかないと実態を測れない。多くの企業にとって、どこから手をつけたらよいのか自前で判断することは難しいだろう。
そこで、方法論として、「LEAP」というアプローチを提示している。自然との接点の発見(Locate)、依存とインパクトの診断(Evaluate)、重要なリスクと機会の評価(Assess)、対応し報告するための準備(Prepare)という4つの段階に沿って取り組みの手順を示したものだ。自然関連のリスク・機会は場所に紐づくため、Locateの作業はTCFDにはないTNFDの特徴といえる。1カ所からでもよいので、自分たちの事業と自然との接点がどこにあり、優先的に取り組むべき重要な場所はどこなのかを見つけることから始めてほしい。