プレステのSHAREボタンがほぼ無意味に マスクのX「改悪」が影響

PlayStationコントローラーの「SHARE」ボタン(oneinchpunch / Shutterstock.com)

PlayStationコントローラーの「SHARE」ボタン(oneinchpunch / Shutterstock.com)

次のシナリオを想像してみてほしい。あるSNSが、人々の間に広く普及し、世界の2大ゲーム機メーカーがコントローラーにそのSNSへの投稿用ボタンを設置するほどの人気を獲得したものの、それを理由もなくダメにしてしまった──。

とは言ってもこれは架空の話ではなく、イーロン・マスクのX(旧ツイッター)で起きたことだ。まず、マイクロソフトのXboxが4月、ツイッターとの統合を廃止。そして今度はソニーのPlayStationも、コントローラー上の「SHARE」ボタンによるXへの投稿機能を今後サポートしないと発表した。このボタンはこれまで、ゲーム画面のスクリーンショットや動画をSNSで共有する最も簡単な方法だった。

サポート終了の理由は、イーロン・マスクがXのAPI利用料金を大幅に値上げしたことにある。ソニーやマイクロソフトのような大企業の場合、利用料金は最低でも月額4万2000ドル(約630万円)。最も高いプランでは、投稿2億件の処理で月額21万ドル(約3200万円)とされる。つまり、年間の費用は数百万ドル(数億円)に上る可能性があるのだ。同じ機能を長年にわたり安く利用していた企業にとって、突然の大幅値上げに応じる理由はない。

以前はツイッター、PS/Xbox、ゲーマーの3者が良い共生関係を構築していたが、イーロンがXの「改悪」を繰り返したことで、この関係は崩壊した。PSでは今後、専用アプリを使って動画をダウンロード・投稿する必要がある。非常にわずらわしく、わざわざこの方法で投稿するゲーマーは少ないだろう。ゲームをプレイするテレビ画面を直接撮影して投稿する「手振れカメラ」の時代に戻ることになるというジョークも語られているが、むしろ笑えない現実となるだろう。

フェイスブックを運営する米メタは、これをXの競合である自社製SNS「Threads(スレッズ)」にとってのチャンスとして捉えるかもしれない。スレッズはまだ広く普及していないものの、Xの代わりにPSやXboxのプレイヤーがスクリーンショットなどを簡単に共有できる場所となるかもしれない。

マスクの不合理な値上げの後、XのAPI利用をやめた企業は多い。マスクによる買収後、ユーザーが減り、広告主が次々と撤退したことを受け、Xは収益源の確保に躍起となっている。最近には、休眠アカウントを5万~25万ドル(約750万~3800万円)で販売する計画も、フォーブスの報道により明らかになっている。

マスク自身が大のゲーマーであることを考えると、これはいささか皮肉な話だ。マスクは、Xにストリーム配信機能を導入したいと考え、『サイバーパンク2077』や『ディアブロ IV』といったゲームのファンであることを示す投稿を繰り返している。ただ、きっとマスクはPCゲーム派なのだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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