ビッグバン(138億年前に宇宙を誕生させたと考えられている現象)からわずか4億7000万年後には存在していたこの天体は、これまでにX線で検出された最も遠くにあるブラックホールだ。
発見に用いられた宇宙望遠鏡は、赤外線で宇宙を観測するジェイムズ・ウェッブ望遠鏡(JWST)と、X線で見るチャンドラ観測衛星。どちらの波長の電磁波も、人間の目には見えない。
著しく遠い
科学誌Nature Astronomyに11月6日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のアーコシュ・ボグダンは「この著しく遠い銀河を見つけるためにウェッブが、その銀河にある超大質量ブラックホールを見つけるためにチャンドラが、それぞれ必要だった」と説明する。「さらには、地球で検出される光の量を増やす宇宙の拡大鏡も利用した」銀河「UHZ1」の中で発見されたこのブラックホールは、これまでに見つかっているどのブラックホールよりも発達の早い段階にある。UHZ1は、太陽系から約35億光年の距離にある銀河団Abell 2744、別名「パンドラ銀河団」の中にある。Abell 2744は3つの銀河団からなる巨大な銀河団で、5万個という驚くべき数の天体が存在する。
だが、ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡の観測で、UHZ1がこの銀河団の背後の、太陽系から132億光年という途方もなく遠方にあることが明らかになった。これは、現在の宇宙年齢のわずか3%しか経っていない時期に相当する。