2014年の発刊から『Forbes JAPAN』はほぼ毎年、地域のイノベーターにスポットライトを当てた特集を企画してきたが、特にここ数年、SDGsやESG投資、サステナビリティへの関心の高まり、さらには働き方改革やテレワークの浸透、テクノロジーの進歩といった側面からも、地域で働くことの役割や意味が変わってきた。
新型コロナやその前後で、地域活性化のトレンドや地域で活躍する若手像はどう変わったのか。これまで日本の地域活性化をリードしてきた地域イノベーター7人に変化のエピソードを伺った。そこから見えてきたのは、等身大で活躍する、地域イノベーターの第2世代、LOCAL INNOVATORS 2.0の姿だ。
「力まずに軽やかで、楽しく」に変化
阿部裕志|風と土と 代表取締役トヨタを辞めて島根県海士町に移住した直後にリーマンショックが起きました。当時はまだ、地域やサステナビリティといった言葉が浸透していなくて、「怪しい」という印象をもたれることが多かったです。
それが東日本大震災で揺さぶられたものの、2018年ぐらいまではやはり資本主義の原理が強かった。ずっと大きな巨人に向かって、「こっちを見てよ」と叫んでいるようでした。
そこから、SDGsやESG投資などを経て、お金の流れが変わり、コロナもあり、巨人がこちらを向いた気がします。SDGsも建前だけではなくなり、巨人は僕らに「とりあえずこっちを向いてみたけど、何をしたらいいのだろう」と聞いてきています。
地域イノベーターの役割も変わり、重要性を叫ぶことから具体的なメニュー提示が求められるようになりました。出版社の「海士の風」を始めたのも、未来に必要な知恵を世に出したいという思いがあったからです。コロナでは、地域に向かう人や企業が増えましたが、地域への入り方がわからない、手探りでしている人が多いという印象です。
今、地域で活躍している20代を中心にした若い人材は、僕たち40代の自己犠牲で地域の信頼を得ようとした移住組の、次の世代になっています。地方に住むことが特殊でもないし、変に力まずに軽やかで、楽しくやっている。そういう変化を感じています。
実例1
京シュトレン by 安居昭博(八方良菓店主)
梅酒の梅の実、生八ッ橋、酒かす、おからなど京都の副産物・規格外品を活用したシュトレンを販売。製造は福祉作業所が担う。『サーキュラーエコノミー実践』(学芸出版社)著者。