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2023.11.15 16:00

【クールジャパンDXサミット2023】開催レポート 宿泊、交通、食のエキスパートによるトークセッション「忖度なしのインバウンド観光DX!」

日本の価値を世界に発信するため、2010年当時の安倍内閣が国家戦略としてスタートさせた「クールジャパン」。しかし10数年の月日が経過したいまもマネタイズなどの課題は残されたままだ。

クールジャパン戦略の限界を突破するために、私たちは何ができるのか。


23年10月4日、5日の両日に渡って開催された「クールジャパンDXサミット2023」は、DXによるクールジャパン再興のキーパーソン、Vpon JAPANの代表取締役社長 篠原好孝(以下、篠原)が、昨年に引き続きオーガナイザーとして手掛けたイベントだ。

そこで繰り広げられた日本国内外の専門家やリーダーによるトークセッション、アワード受賞企業の事例発表などは、クールジャパン再興の手がかりを、広く知らしめるものだった。

クールジャパンに立ちはだかる課題について4,000人が考えた2日間

10月4日はオンライン、5日は大阪会場でのリアルイベントとして開催された「クールジャパンDXサミット2023」を、2日間合計で約4,000人が見守った。

内容は、星野リゾートの代表 星野佳路らが参加した「忖度なしのインバウンド観光DX!〜宿泊、交通、食の観光DX課題にズバッと切り込む〜」や、大阪府との観光交流を行う台湾の桃園市政府観光旅遊局局長、周 柏吟を迎えた「日台インバウンド観光DXの思わぬ共通点とは? 〜インバウンド観光における大阪と桃園(台湾)のデータ活用とマーケティング戦略の方向性・共通点に迫る〜」などの刺激的なトークセッションが8つ。

さらにデジタルマーケティング活動を推し進める企業を表彰する「クールジャパンデータ&デジマケアワード」の授賞式も行われ、干し椎茸を欧米へ浸透させるデジタルマーケティングを展開した「杉本商店」が選ばれた。

「クールジャパンデータ&デジマケアワード」の最優秀賞に選ばれた「杉本商店」

宿泊、交通、食……。観光の主要テーマで進まないDXの現状

今回は会場を沸かせたトークイベントのなかから、「忖度なしのインバウンド観光DX!〜宿泊、交通、食の観光DX課題にズバッと切り込む〜」の模様をレポートする。旅の本質、宿泊、交通、食といった分野で、DXは本当に進んでいるのかを、忖度や予定調和なしで忌憚なく議論したセッションだ。
「忖度なしのインバウンド観光DX!〜宿泊、交通、食の観光DX課題にズバッと切り込む〜」の様子。写真左から、Vpon JAPANの代表取締役社長 篠原好孝、日本ガストロノミー学会代表でありフードロスバンクの代表取締役社長 山田早輝子、ジェイアール東日本企画の常務取締役 社長補佐CDO ソーシャルビジネス・地域創生本部長 高橋敦司、星野リゾートの代表 星野佳路

登壇したのは、宿泊分野から、DXでインバウンドの可能性を大きく切り拓いた「星野リゾート」の代表 星野佳路(以下、星野)。交通分野からは、イベント5日前にインバウンド向け特別企画乗車券「ジャパン・レール・パス」の販売をリニューアルしたJRグループから「ジェイアール東日本企画」の常務取締役 社長補佐CDO ソーシャルビジネス・地域創生本部長 高橋敦司(以下、高橋)。食の分野からは世界の美食と食文化に造詣の深い「日本ガストロノミー学会」代表であり、「フードロスバンク」の代表取締役社長 山田早輝子(以下、山田)。モデレーターを務めるのはサミットのオーガナイザー、篠原だ。

トークセッションはまず、篠原の問題提起から始まった。

Vpon JAPANの代表取締役社長 篠原好孝

「人によっては“何をいまさら”とネガティブな印象をもたれることもあるクールジャパン戦略ですが、海外展開×インバウンド観光による海外需要の開拓市場は、適正なDXを行うことで、年間50兆円の巨大なポテンシャルがあると予測しています。

ただそのためには官民一体、横串連携のオールジャパンで進めていく必要があり、適正なDXプラットフォームの構築も必須です。このセッションでは、具体的にどのように進めていけば良いのかを議論していきたいと思います。」

インバウンド観光の分野で篠原や星野が掲げる日本が目指すべき姿は「日本全体が恩恵を受けるサステナブルな観光立国であり世界の先進国と肩を並べるステイクホルダーツーリズム推進国」だが、近年問題視されているオーバーツーリズムや人手不足問題など、観光DXは決して順調に進んではいないのが現状だ。

「日本の観光は、世界からどんどん後れをとっている。」

そう指摘するのは、「星野リゾート」4代目として数々の改革を成し遂げてきた星野だ。

「星野リゾート」の代表 星野佳路

「日本の大きな魅力である歌舞伎、大相撲、いまだ海外からオンラインで席の確保が簡単にできるような状態ではありません。」

世界標準として星野が挙げたのは、そうしたスマートフォンで可能な海外からのオンライン予約であり、日本では事実上規制されているAirbnb(民泊)とUber(ライドシェア)だった。これらの導入が、クールジャパン奏功の最低限の条件と断じる。

「もちろんタクシー業界が危惧していることも知っています。しかし新幹線も停まらない地方の無人駅に目を向ければ、話は違います。東京で運転手不足が叫ばれるずっと以前から人員が不足しており、遠方から迎車で向かうと商売が成り立たない地域があるのです。ライドシェアはそうした課題を解決する強力な手段です。実際にニューヨークのイエローキャブは、Uber登場を機にサービス品質を向上し、共存を成功させています」(星野)

高橋が口を開いたのは、日本の移動手段の主役・鉄道でのジャイアントステップについてだ。今年10月より販売方法をリニューアルし、価格改定したばかりの「ジャパン・レール・パス」。このジャイアントステップの実現には多大な時間が必要だったという。

「これは日本への旅行客が、現地からオンラインでレールパスを直接予約できる仕組みです。従来は海外の日系旅行会社を通じてのみ購入可能でしたが、新幹線などのJR予約も直接海外から可能になりました。ちなみに、それまで東海道新幹線開通時代から変わらず7日間全国乗り放題で3万円弱だった価格は、5万円にまで値上げされました。」

値上げという手段には、食の専門家である山田も強く反応した。

「特に、海外客を対象にするなら、適正な価格設定(値上げ)は不可欠です。私がかかわる飲食業界も、そろそろ我慢大会をやめる時期に来ていると感じています。繁盛していても、経営が苦しいままのお店のお話もよく耳にします。ソフトにもきちんと対価を払うべきだと思います。日本にはサービスという見えないものにお金を払うことに抵抗を感じる風潮があります。しかし現在の“日本は何でも安い”という状態が、飲食サービス業従事者の苦しみの上に成り立っているのなら、持続可能ではないでしょう。」

それよりも予約がしやすい環境を整えるためのDXを行うこと。海外経験の豊富な山田は、今のままでは周辺国に勝てなくなると危惧している。

「日本の飲食店の96%が、海外からのオンライン予約に対応していない状態です。システム自体は存在していても、各店がお金を掛けてまで導入したいとは考えない。その結果富裕層を中心に、食、交通、宿泊をシームレスに体験した人々は、より予約がしやすい、言語対応がされてるなど、国際基準に達している周辺国に流れてしまいがちです。コンテンツが良くてもこれではとても観光立国など望めません。」

「日本ガストロノミー学会」代表、フードロスバンクの代表取締役社長 山田早輝子

インバウンドが地域にお金を落とすための“連泊”と食のDX

適正な価格転嫁ができなければ、現場は疲弊する。星野はさらに、観光地の地域にお金が落ちにくい日本の観光の仕組み自体に言及した。

「国内観光の主流を占める1泊2食形態。オーバーツーリズムの要因となる交通渋滞を引き起こしやすく、ホテル内で食事を済ませてしまうと、地域のレストランに出かけず、地域にお金が落ちません。その問題を解消するには、連泊、長期滞在が基本の受け入れ体制に変化する必要があります。私はホテルの運営側ですが、2泊目以降、外に食べに行くことで、宿泊客はよりオーセンティックな体験ができると考えています。」

そのためにも海外からのスムーズな予約体制を、DXにより構築すべきだと、山田は言う。

「海外に伝わる日本の食の情報は非常に少ない。なぜなら、日本中で大勢の店舗がオフラインの状態だからです。」

星野も予約システムの不備が問題だと同調する。

「自治体にDX予算は計上されていても、食に使われていません。その結果、海外客の主な情報ソースであるミシュランガイド掲載店だけに、客が集中する。どんなに良い店でも知られていないうえに、予約もできないなら仕方ありません。」(星野)

情報を提供するだけでもメリットはあると指摘するのは高橋だ。

「地方事業者の方に、せめてGoogleマイビジネスに正しい情報を入れてくださいとお願いしています。岩手のわんこそば店が、それだけで驚くほど客足が伸びました。」(高橋)

食の情報という点では、フードダイバーシティーも重要ではないかと指摘するのは、篠原だ。山田が現在の日本の情報不備を指摘する。

 「ハラールに則った食材に限定されるムスリム(イスラム教徒)の数は、2030年には全人口の1/4まで達すると考えられています。ところが日本では食材が何なのか、メニューに明示されている方が珍しい。結果、ムスリム客は情報が豊富なシンガポールなどに旅先を変えてしまっています。」(山田)

上記の施策はどれも、DXによる見える化の実現だ。本来あるものを変えるわけではなく、どこからでも知ることができるようにするだけのことである。それでも日本のクールが世界中に伝わると、彼らは強調する。

「先日京橋の立ち飲み屋で、アメリカ人の2人組に出会いました。聞くと、母国でブログを見てやってきたと言います。デジタルのおかげで、はじめて日本にやってきて、こうしたディープなスポットを訪れて楽しむことができる。日本がグローバルで勝ち抜くための秘訣は、すでにある情報(日本の魅力)を整備して準備をしておくことなのです。」(高橋)

ジェイアール東日本企画の常務取締役 社長補佐CDO ソーシャルビジネス・地域創生本部長 高橋敦司

そのうえで最後に念を押すように、星野が口を開いた。

「世界標準に合わせた規制緩和、デジタルでの予約、決済システムの構築に対する産業界の投資、それが今まさに負け始めている日本が逆転するための有効手段なのです。」

日本は本当にサバイブするつもりがあるのか〜イベントで見えたポジティブな回答

2日間にわたる「クールジャパンDXサミット2023」を終えて、オーガナイザーの篠原が感じたこと。それはサバイブに対する観客の熱い思いを感じての、ポジティブな希望だった。

「想定をはるかに超える多くの反響をいただき、たくさんの方々を巻き込むことができたと思っています。来年もさらに日本全体を巻き込み、熱いムーブメントをつくっていきたいですね。」

ではこの先、Vponとしてどのようなアクションを取っていくのだろうか。

「来年の『クールジャパンデータ&デジマケアワード』にさらに多くのエントリーをしていただけるよう、年内には募集を開始するつもりです。データ&デジタルの力で世界にチャレンジできる社会をつくるために、さらなる挑戦を続けていきます。」

今回レポートした「忖度なしのインバウンド観光DX!」はもちろん、その他のセッションについても、以下よりアーカイブが配信中だ。
https://www.cooljapan-dxsummit.com/


山田早輝子(やまだ・さきこ)◎聖心女子大学卒業、住友商事退社後海外を中心に活動。国連, WHO, UNESCO, EU等と提携する国際ガストロノミー学会によるアジア初の学会の設立代表として任命され、日本ガストロノミー学会代表に。取り組みが国連WFFの教材になったフードロスバンクの代表でもある。

星野佳路(ほしの・よしはる)◎1960年長野県軽井沢生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士を修了。91 年に星野温泉旅館(現・星野リゾート) 代表に就任。以後、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に、国内外で67施設を運営。

高橋敦司(たかはし・あつし)◎1989年東日本旅客鉄道(JR東日本)入社。千葉支社営業部長、びゅうトラベルサービス代表取締役社長、JR東日本本社営業部部長等を経て17 年ジェイアール東日本企画 常務取締役に就任。現在 常務取締役社長補佐CDO ソーシャルビジネス・地域創生本部長に就任。

篠原好孝(しのはら・よしたか)◎学習院大学卒、LVMH(ルイ・ヴィトン)を経て、Simplenaを創業後、2014年にVpon JAPANを設立、代表取締役社長に就任。19年、Vpon Holdings代表取締役 CSOに就任。また、海外需要開拓の機運を高めるクールジャパンDXサミットのオーガナイザーを務めている。

Promoted by Vpon JAPAN / text by Ryoichi Shimizu / edited by Akio Takashiro