その衣服とはイッセイ ミヤケの服を指す。
衣服と自分が近づく旅であり、衣服とアートを巡る旅である。
初めてイッセイ ミヤケの服を着たのは大学生の時。90年代だ。同級生のダンス仲間がファイナルホームを着ていたことによりイッセイ ミヤケのユニークネスを知り、また、登場してまもないプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(以下、プリーツ プリーズ)を着て大学にも通った。初めてプリーツ プリーズを着た時の感想は「ど根性ガエル」のピョン吉を纏ったような感覚。服自体が弾んで飛んでいくような躍動感を得た。
その躍動感は2013年にスタートしたオム プリッセ イッセイ ミヤケ(以下、オム プリッセ)を纏っていても感じる。オム プリッセは、男性用プリーツという意味なのだが女性が着ても問題ない。独自のプリーツ素材のおかげで出張時のトランクにギュウギュウに詰め込んでも、着る時にはピンっと気持ちの良いプリーツの弾力が「相棒今日も頑張ろうぜ!」と話しかけてくれているようで、着ていて楽しくなる。アクティブにピョンピョン跳ねたりすると動きが追従してくれるのも、着ていて本当に楽しい。”ジェンダーフリー” などの頭でっかちな言葉なんか無用の「楽しいから着る」、たまたまそれが男性用プリーツという名称なだけなのだ。私という人間を表すのにもってこいのアイテムだ。
さて、時は巡り2023年秋、「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)」(以下、A-POC ABLE)の冒険の始まりに参加させていただいた。冒頭の「So the Journey Continues」はA-POC ABLEのパリデビューのインスタレーション展示のタイトルだ。
A-POC ABLEは ”三宅一生氏の思考を受け継ぎ、新進のテクノロジーや伝統のクラフツマンシップ、あるいはアートの創造性との協業によって、点から線、面へと新しいものづくりの可能性を拡張し、さまざまな「ABLE」を生み出す”ことを目的に、2021年、宮前義之氏が率いるエンジニアリングチームがスタートさせたブランドである。”A Piece Of Cloth” の頭文字をとり1998年に三宅一生がパリで発表したA-POCの進化系を宮前義之氏チームがフロンティアを開拓し続けている。その旅の中身はどのようなものだったのか?