だが、ロシア軍は慎重な軍隊ではない。ロシア軍はいったん攻撃を停止して、損害が目標に見合うものか再考するどころか、アウジーイウカ方面で攻撃をいっそう強めた。さらに、周到に防御されたもう一つのウクライナ軍の拠点であるブフレダル方面でも正面攻撃を加えた。
これらの攻撃を続ければ、ロシア側の兵士や装備の損害はさらに膨らむ公算が大きい。ロシア軍はブフレダルとアウジーイウカのどちらか、あるいは両方を陥落させるかもしれない。しかし、これらの拠点は、兵士1000人の命や5億ドル(約750億円)分の装備を失ってまで、確保する価値のある目標だろうか。
ロシアの政府・軍、そしてロシアの社会一般にしか答えの出せない問いだ。
一方、同じ問いをウクライナ側にすれば、答えはほぼ間違いなく「ノー」だろう。ウクライナ軍は部隊や装備を保つためにもっと大きな努力を払っている。昨年、東部ルハンスク州のセベロドネツクを守りきれなくなった時、ウクライナ軍は部隊を撤退させた。今年、ドネツク州のバフムートを守りきれなくなった時もやはりそうした。
どちらの場合も、撤退したからといって、ウクライナ軍による同じ区域での反転攻勢や、1000キロメートル近くにわたる前線のほかの場所での攻撃が不可能になるわけではなかった。ウクライナ側は、たとえ敗北のように受け止められるとしても、場所を捨てて時間と機会を取る姿勢を示した。ロシア側がこうした計算をするのかどうかははっきりしない。
というより、ロシア側がそもそも何を考えているのか、さっぱりわからない。
(forbes.com 原文)