個人情報の削除要請が認められるのは、データが古いまたは不快なものであるなど、特定の基準を満たしている場合に限られます。
世界経済フォーラムの、グローバル・コアリション・フォー・デジタル・セーフティは、オンライン上の有害なコンテンツに対する取り組みを進めています。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。
デジタル化の加速に伴い、私たちのデジタルの足跡は驚くほど長く残るようになり、中には、ネット上から消えて欲しいと思う情報もあるでしょう。
こうした現象により、個人データを削除してもらう権利として知られる「忘れられる権利」を、ネット時代の新たな人権として求める声が上がるようになりました。この権利は、賛否が分かれるものの一部の国では法的に認められています。
最近では、カナダの裁判所が、グーグル検索における忘れられる権利をカナダ人に認める判決を下したことで、この権利が再び注目を集めるようになりました。同国の連邦控訴裁判所は、検索エンジンが国のプライバシー法の対象であると判断したのです。これを受け、コロンビア・ジャーナリズム・レビューは、「EUの忘れられる権利が、他国にも広がりつつある」と言及しています。
忘れられる権利を求める声の高まり
2010年以降、私たちは大量のデータを生成しており、中でも特に大幅に増加し続けているのはオンラインデータです。2010年に2ゼタバイトだった世界のデータ生成量は、現在、推定120ゼタバイトと60倍に急増。デジタル時代の到来に伴う結果であることは明白で、そのデータの一部はおそらくあなたにも関係するものでしょう。
もしそのデータが、古いまたは不快なものであれば、ネット上から削除してほしいと願うかもしれません。こうした個人の望みが、忘れられる権利を守る規則の誕生を後押ししました。
きっかけとなったのは、あるスペイン人が、自分の名前に関するオンライン検索結果に既に解決済みの1998年の法的手続きに関する情報が言及されていることについて、2010年に起こした訴訟。グーグルは、この情報を検索結果ページから削除するよう命じられました。
忘れられる権利とは
人々がオンライン・プラットフォームから自身に関する特定の個人情報を削除するよう組織に要求するこの権利は、全世界で認められているものではなく、認められている場合でも、組織は必ずしも要求に応じる必要はありません。EUは、2014年に一般データ保護規則(GDPR)の一部として「削除権」を定めました。2019年には、グーグルがこの権利をEU以外の地域に適用する必要はないという判決が下されましたが、カナダのニュースが示すように、権利の適用に関する検討と議論は広がりを見せています。
例えば日本では、2016年に、逮捕歴のある男性がグーグルの検索結果から逮捕に関する記事の削除を求めたことで、忘れられる権利が認識されるようになりました。