アート

2023.11.06

書は日本を守る「芸術」だ。郷祥が挑む、書と現代アートの世界

会社員として勤務しながらアーティスト活動を続ける郷祥

書は文化なのか、芸術なのか。郷祥(ごうしょう)の作品を鑑賞すると、見方が変わるかもしれない。

書道家、墨跡画家、現代アーティストと多様な肩書きで活動する郷祥は、日本の伝統文化である書を、より身近に、芸術的に、より国際的なものとすることを目指す。2022年には現代アーティストとして、フランスの公募展「ル・サロン」への入選や、美術界の登竜門「サロン・ド・アール・ジャポネ2022」のグランプリ受賞も果たした。

世界的に活躍する一方で、地元の香川県を愛し、同地の電力会社で勤務をしながら作品制作を続けてきた。その功績が認められ、今年10月には高松市文化奨励賞を受賞している。

11月6日から東京では2度目の個展を開催する郷祥に、書にかける思いを聞いた。


——書道家、墨跡画家、現代アーティスト。それぞれどのような違いがありますか。

地元の香川県ではおもに書道家として、県外では墨跡画や現代アートを中心に活動しています。例えば書道家としては、9月に空海生誕1250年の節目を迎える香川県の善通寺で、書のライブパフォーマンスを行いました。

一方、墨跡画や現代アート作品ではほとんど文字は書きません。墨跡画はインテリアアートのような感じで、コンセプトなしで「美しいもの」をつくっています。現代アートは、作品ごとにコンセプトを設定して制作します。


「KAZE」(606mm×910mm)

もっと書の魅力を伝えたい

——元々は書道家を目指していたのですか。

幼いころから書を続けていたので、自然と「将来は書道家になりたい」と考えていました。しかし、高校生のころに周囲から「芸術で食べていくのは難しい」と反対されて。自分には実績も何もなかったので、それはそうだと思って京都の総合大学に進みました。

大学卒業後は、生まれ育った故郷に恩返しをしたいという思いがあったので地元に戻り、地域のインフラを担う電力会社に就職しました。会社では責任のある仕事を任され、やりがいや充実感はありましたが、入社3年目のときに「自分にしかできないことをやりたい」という思いが強くなりました。書道ならそれができるのではないかと。そこで一念発起して、働きながら2年間大阪に通い、2015年に書道の師範免許を取りました。
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文=久野照美 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二 作品画像=郷祥さん提供

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