アーチャーの乗員は、1発に6.5個の装薬を詰め込むことができ、約40km先まで砲弾を飛ばすことができる。この射程は、ロシアとウクライナの戦争で使用されているほとんどの大砲より長い。例外は大口径の砲で、両軍が使用している口径203mmの2S7カノン砲もその1つだ。
砲の角度を変え、装薬数を調整し、15秒間に3発という速射を行うことで、アーチャーは2005年に当時アーチャーのプログラムマネージャーだったウルフ・アイネフォルスが「MRSIによる標的へのかなりの瞬間的効果」と表現したような効果を得ることができる。
MRSIは「multiple-round simultaneous impact(複数砲弾同時着弾)」の頭字語だ。つまり、1つの砲が複数の砲弾を1つの標的に同時に命中させる。
30秒で準備を整え、5秒ごとに砲弾を3発放ち、次の30秒で移動の準備をすることができるため、アーチャーの乗員は約40km離れた敵の陣地に向かって一斉射撃を行い、発射した3発すべてが同時に爆発する前に移動することができる。
アーチャーのスピードと射程距離、同時着弾という組み合わせに匹敵する砲兵システムが他にあるかどうかはわからない。おまけに、アーチャーはりゅう弾砲としては装甲が厚く、バラクーダ迷彩が施されているため、目視で見つかりにくく、また赤外線信号も隠すことができる。
アーチャーりゅう弾砲の設計は、敵に見つかって撃ち返される前に撃って逃げることを意図している。近くにいる敵軍がカモフラージュを見破り、ドローンを使うなどしてアーチャーを狙い撃ちした場合、アーチャーは軽い攻撃をそらし、逃げながら鎮圧射撃をすることができる。
アイネフォルスは、アーチャーが155mm砲を地面と平行にして戦車のように標的に直接射撃できることを強調した。
ウクライナ、ロシア双方で何千もの大砲や発射機が使用されている戦争において、りゅう弾砲8門というのは決して多いとはいえない。だが代替のものが古く、スピードも遅く、精度も低い砲なら、8門でもないよりましだ。
そしてアーチャーは第45旅団に新たに装備された兵器の一部にすぎない。同旅団は米国製のM777けん引式りゅう弾砲や、イタリアかエストニアが供与したFH70けん引式りゅう弾砲、対戦車ミサイルやドローンも運用している。
(forbes.com 原文)